2011 Fiscal Year Annual Research Report
次世代分光・測光観測に基づく太陽系外惑星の表面環境同定とバイオマーカー
Project/Area Number |
11J06070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 友香 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際研究者交流 / アメリカ / 系外惑星 / 天文学 / 地球 / 生命 / アストロバイオロジー |
Research Abstract |
相次ぐ系外惑星の発見から、地球サイズの惑星が宇宙に普遍的に存在することが示唆されている。次なるステップは、これらの地球型惑星についてより詳細な情報を得ること、さらには生命の徴候を探すことである。惑星表面を探る鍵となるのは、組成による反射スペクトルの違いである。例えば、海と陸は好対照をなすため分別・同定できる可能性がある。また植生のスペクトルには0.75um付近で急激な上昇するレッドエッジという特徴があるが、これは光合成に起因する特徴であるためバイオマーカー(生命の存在を示唆する指標)の一つとしても考えられている。しかし、系外惑星の反射光は空間解像度のない点源として観測されるため、様々な成分が複雑に混ざり合っており、その解釈は容易でない。そこで私は、惑星の自転や公転による時間変化を利用して反射光の時系列データから惑星表面をマッピングする方法を開発し、地球の反射光の観測データやシミュレーションデータを用いてその実現可能性を検証した。 具体的には、まず地球型惑星の反射光を計算するコードを作成し、このコードと地球観測衛星で得られた地球の各地点でのデータを組み合わせたシミュレーションがEPOXI missionによって得られた地球の反射光の特徴をよく再現することを確かめた。また、等方的な散乱・数種類の表面組成という仮定による反射光のモデルを用いて観測データを解析することで、地球の経度方向の大陸・陸・植生などの分布が再現できることが分かった。一方、自転だけでなく公転の影響も合わせた反射光の時間変化も考慮することで表面の2次元アルベドマップを再構築する方法を考案した。1年間の地球の反射光のシミュレーションデータに適用した結果、可視域の単一バンドのマッピングから雲や雪の成分の非一様性が、二バンドの差のマッピングから海や陸などの表面組成の非一様性が、再構築できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの地球型惑星の反射光のシミュレーションを雲のある場合に拡張し、このシミュレーションを用いて、長時間の多バンド測光観測から統計的な雲の分布が分離できることを示すことができた。また、時間変動のパターンから自転周期だけでなく赤道傾斜角も推定可能であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に主に考察してきた反射光の連続成分に加えて、大気分子による吸収線の深さとその変動、あるいは反射の非等方性についても、適宜モデリングやシミュレーションを行いながら調べ、これらの観測可能量を相補的に用いることで系外地球型惑星の表層環境の詳細を知る方法論を開拓する。また、これまで以上に多様な表層環境について考察する予定であり、そのために、地球史に沿った地球環境の変遷のデータや、さまざまな条件のもとでのGCMによる大気循環/水循環のシミュレーション結果などを用いる。
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