2011 Fiscal Year Annual Research Report
利他としての病原体感染による死 : 実験と数理を連結した集団動態モデル系での解明
Project/Area Number |
11J06152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福世 真樹 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 感染 / 利他行動 / 進化 / 実験 / シミュレーション / 大腸菌 / ファージ |
Research Abstract |
本研究では何故病原体感染によって死ぬのかを問う。病原体は何故ホストを直ぐに殺してしまい病原体の増殖の機会を減少させるような強毒性を維持できるのだろうか。これまでは病原体側に着目した説明がなされてきたが、本研究ではホストに着目して、病原体のホスト殺しがホストにとって有利であるから維持されるという仮設を立てた。病原体の増殖に伴う2次感染によるホストの絶滅が、感染されたホストが病原体もろとも自殺する事によって防がれる。このホストの利他的な自殺型感染防御による死亡率の増加が見かけ上の病原体の毒性となって維持されていると仮設を立てた。 その検証をホストを大腸菌、病原体をλファージとする大規模(10^8個体)集団感染実験系と巨大な(10^4x10^4)二重二次元格子を用いたシミュレーションの双方から行った。 「感染によって直ちに自殺するホスト」と「自殺しないで病原体増殖を許すホスト」を混合して感染を進めたところ、空間構造のある時には、自殺型ホストの相対頻度が二桁上昇し、シミュレーションでそれを再現でき、自殺型感染防御が実証された。また,実験では、継続的な感染によって、ホストに自殺をさせない病原体が出現した。 この病原体の毒性の進化に関する新たな説は、病原体とホストの関係を理解する上での新しい視点を提供する。さらに、実験で出現したホストに自殺をさせない病原体というのは毒性の観点からは弱毒株であり、病原体は弱毒の方向に進化し、ホストは病原体に強毒を強いる方向に進化するという、病原体とホストの新たなせめぎ合いを見出した。また、この大規模集団感染実験とシミュレーションを連結したアプローチは、感染の集団生物学の様々な問題を解く上で有効であろうと考えられ、動植物をホストとするウイルスや細菌への応用が期待される。似上753文字)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
"なぜ感染で死ぬのか?"という生命科学の根本問題に取り組み、大腸菌とその病原体をモデルとする実験と、シミュレーションを連結したオリジナリティーの高い解析系を構築した。「空間構造のあるところでの自殺型感染防御戦略の成功」という明確な結果を得た。さらに、病原体側のホストを殺さない変異体の進化という予期しない結果を得て、これをゲノム配列レベルまで突き詰めた。これらの成果をNature Publishing Groupのオンラインジャーナル"Scientific Reports"に公表した。これは、東京大学のインターネットサイトのTodai Researchでも紹介され、また東京大学医科学研究所より学生優秀論文賞を授与された。この成果で東京大学より博士号を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、ペア近似法を用いて解析を行い、目殺型感染防御戦略の広まる条件を検証する。その際に、特に対立戦略となるであろう、免疫を獲得する戦略の影響について注目する。
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Research Products
(3 results)