2011 Fiscal Year Annual Research Report
陽イオン比および面内歪制御に基づく新規強誘電体複合酸化物薄膜の開発
Project/Area Number |
11J06215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 俊介 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強誘電体 / 不定比性 / 薄膜 / 透過型電子顕微鏡 / PLD / SrTiO3 |
Research Abstract |
次世代の不揮発性メモリの候補の一つとして、強誘電体薄膜を利用した強誘電体メモリの実用化が期待されている。本研究では全く新しい着想点から、PZT薄膜の自発分極を超える強誘電性を発現させる事を目的とする。本研究は常誘電体であるSrTio3(STO)ホモエピタキシャル薄膜から陽イオン比の化学量論組成比からのずれに起因した強誘電特性を発現させ、さらに基板との格子不整合性による面内歪を利用する事で今までにない大きな自発分極の達成を目指す。目標達成の為、下記の項目を初年度計画とした。それぞれの進捗状況に関して状況を述べる。 初年度研究計画 1.高品質な薄膜を作製する為に装置の改良を行う。 2.Sr過剰からTi過剰までのSTO薄膜を作製する。 3.強誘電性測定方法の確立 (4.強誘電性発現機構解明の為の手法を確立(10pmオーダーにおける原子位置変位の可視化)) 1.現行のパルスドレーザー堆積法装置の改良を行った。具体的には、薄膜中の組成制御をより精密に行う為に、レーザー照射系の改良を行った。また、さらに高品質な薄膜を作製する為、現状の成膜温度1000°Cよりも高温にて成膜を行えるよう基板ホルダーの工夫を行い1150°Cまで成膜温度を上げることに成功した。 2.薄膜中の欠陥構造はTi過剰側では理論的に予測されている均質分散化したSr空孔を形成させ、Sr過剰側では過剰なSrO層を形成させた薄膜の作製に成功した。 3.計測装置の立ち上げを行った。現在、強誘電性測定の為の電極作製に取り組んでいる段階である。 4.本項目は次年度(平成24年度)の研究計画に含まれている課題であるが、研究の進行上、上記3の課題を達成する前に取り組んだ。成果としては、強誘電性発現のメカニズムを明らかにする手法を確立させるために、走査型電子顕微鏡像から原子変位及び空孔の情報のみを抽出することにより欠陥近傍の陽イオンの僅か10pm程度の変位を可視化する事に成功した。現在、本研究成果を論文として投稿している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画の一部は計画からやや遅れている。しかしながら、次年度に計画していた研究が既に成果が出ており(9.研究実績の概要にて記載済み)、さらに、研究成果として論文を投稿中である。このことから、全体としてはおおむね順調に研究は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の課題として得られた薄膜のP-E履歴曲線(P:分極、E:電場)を測定することにより強誘電特性の測定を行ことである。現状として、測定を行うための極間間隔を10μmという電極をフォトリソグラフィーにより作製を行い、デモサンプルにて成功している段階である。これにより、得られた薄膜の強誘電性の測定を今後行い、組成変化による構造変化に伴う強誘電性の発現機構を最新の透過型電子顕微鏡観察技術により明らかにしていく予定である。
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Research Products
(3 results)