2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞シミュレーションによるTNF及びTRAILシグナル伝達の細胞死誘導機構の解明
Project/Area Number |
11J06222
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 謙太郎 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | TRAIL / TNF / シグナル伝達 / 癌 / シミュレーション / 関節リウマチ |
Research Abstract |
悪性腫瘍である癌細胞を細胞死へと誘導する事は、現在の分子標的薬の開発にむけた大きな課題である。 その対象として、免疫機構で大きな役割を果たすサイトカインであるTNF(Tumor-Necrosis-Factor)やTRAIL(TNF-Related-Apoptosis-Inducing-Ligand)は、非常に着目されている。これらのサイトカインは、癌細胞に対して細胞増殖と細胞死のシグナル伝達を誘導する事が知られているが、どのようにコントロールされているかはまだ知られていない。本研究では、TRAILをリガンドとした癌細胞内の細胞増殖と細胞死のシグナルのスイッチング機構について研究を行った。対象の癌細胞としてヒト浸潤性線維芽肉腫細胞株であるHT1080を用い、野生型およびいくつかの分子(FADD、RIP1、TRAF2およびカスパーゼ-8)のノックダウン条件で、細胞生存に関与する分子(IκB、JNK、p38)とアポトーシスに関与する分子(カスパーゼ-8、カスパーゼ-3)の経時的活性化プロファイルを、摂動応答理論を応用したシミュレーションモデルを作成し、解析を行った。その結果1.p38とJNKを活性化するFADDとは独立した経路、2.RIP1とP38間のクロストーク、3.p62とJNK間のクロストーク、および4.JNK上流の活性化プロセスの存在が予測された。特に、その後のシミュレーションから、p62/sequestosome-1分岐点で新規分子を標的とすることで、シグナル伝達フラックスの再分配を介して細胞死が最適化されることが示唆された。現在は、これらの予測した結果に基づきウェスタンブロットやRT-PCR,MTTアッセイなどの実験を行い、良好な結果が出てきている事に伴い、今年中に論文投稿予定である。さらにTNF刺激による線維芽細胞内の遺伝子発現の解析を行った。その結果、RIP1をノックダウンすることで、関節リウマチの原因となるmmp遺伝子発現が最も抑制される事が示唆された。こちらのプロジェクトに関しても今年中に論文を投稿予定である。 本手法は、物理的法則に基づいた新規手法であるため、TRAILに限らずどのようなシグナル伝達経路においても汎用的に用いる事で、様々な現象の理解にも繋がる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TRAILを用いたプロジェクトに関しては、2011年に発表した予測データを元に新たに実験を行い、概ね実験は順調に進んでいる。さらにTNFを用いたプロジェクトに関しても、TRAIL同様、予測したデータを用いた実験が順調に進んでいることから区分(2)の評価とする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続して、予測したデータを用いて分子生物学的な実験を遂行していく。万が一、実験データに不備があれば、これまで行ってきたコンピュータ用いたシミュレーションの再度確認を行い、実験と情報学の両方を相互に上手く活用しながら、研究を進めていきたい。
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Research Products
(3 results)