Research Abstract |
本研究の目的は,きわめて高い安全性と効率性を兼ね備えた暗号方式の設計である.この目標に向けて研究を行い,2011年度には主に二つの成果を得た.一つ目の研究は,高機能公開鍵暗号の安全性を高める研究,二つ目の研究は効率の良い電子署名の研究である.どちらの研究も産業技術総合研究所との共同研究である. 一つ目の研究では,関数型暗号の安全性を高める一般的な変換方法を提案した.また,ある性質を持つ関数型暗号が,関数型匿名否定可能認証という要素技術としても用いることができるということを指摘した.安全な関数型暗号は,今後迎えるであろうクラウド全盛の時代において,必要不可欠なものであり,本研究はそのための重要な一助になると考えられる.この研究は2012年2月に,国際会議PKC2012に採録が決定し,同年2月に発表予定である. 二つ目の研究では,効率の良い電子署名の研究を行った.具体的には,2011年にAsiacryptで提案された,Hofheinz,Jager,Kiltzらの電子署名方式の,公開鍵サイズを大幅に削減できることを示した.Hofheinz,Jager,Kiltzらは,強Diffie-Hellman仮定を利用した電子署名と,RSA仮定を利用した電子署名を提案しているが,我々は前者に関しては公開鍵を1/100以下,後者に関しては1/200000以下に安全性を落とさずに削減できることを証明した.電子署名は,インターネットを支える基本的かつ重要な要素技術であり,本研究によりその効率性を大きく改善したことは大きな意義があると考えられる.前者の研究は,国際会議CT-RSA2012に採録され,2012年3月に発表を行った.後者に関しては,2012年2月に採録が決定し,同年5月に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では,理論的にも実用上も重要だと考えられる要素技術に関して,安全性,効率性の向上に成功した.また,暗号理論関係の国際会議の中でも難関であるCT-RSAに1本,PKCに2本論文が採録されており,研究はおおむね順調に進んでいると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,格子暗号の研究を進めていきたいと考えている.格子暗号は,理論的には代数的整数論と深い関係があるなど非常に興味深い側面がある一方,実用的にも量子コンピュータの出現にも耐えうると考えられており非常に重要である.研究を遂行する上では,量子計算や代数的整数論などの深い知識が必要になると考えられるので,関連書籍を購入するなどして適宜知識を補充したいと考えている,
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