2012 Fiscal Year Annual Research Report
計算問題に基づき、効率的かつ帰着がタイトな公開鍵暗号の研究
Project/Area Number |
11J06283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 翔太 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 公開鍵暗号 / 電子署名 / 格子問題 |
Research Abstract |
本研究の目標は,十分に安全でかつ効率的な,公開鍵暗号や署名などの暗号プリミティブを提案することである.この目標にむけ,前年度は判定双線形ディフィー・ヘルマン問題に基づく公開鍵暗号方式や,ディフィー・ヘルマン問題に基づく署名方式,RSA問題に基づく署名方式などの提案を行った.今年度もこのような研究を進め,秘密鍵を暗号化しても安全であるような新しい公開鍵方式を提案した.この方式は,既存の同様の性質を達成している方式に比べ,公開鍵サイズが圧倒的に小さいという利点がある.この結果は,国内シンポジウムであるSCISにて発表した. これらの方式は実用的な量子コンピュータが実現していない現在では,十分に安全であると考えられるが,今後量子コンピュータが実用化した際には安全ではなくなってしまうことがわかっている。そこで,今年度は量子コンピュータが実用化した後にも安全であると考えられている格子問題に基づく暗号方式の研究も並行して行った.特に,最悪時格子問題に量子帰着が可能であることが知られている誤り付き学習問題(Learning with error problem),最悪時格子問題に古典帰着が可能である短整数解問題(Short integer solution problem)などの問題に基づく公開鍵暗号や署名方式のサーベイを詳細に行った.本年度は新方式の提案には至らなかったが,既存研究の問題点を発見するなど,今後の研究につながる知見を得ることができた. また,8月から9月にかけて,NTTセキュアプラットフォーム研究所にてインターンを行った.企業における研究の体験を通して,理論とその実社会への応用に関して学ぶことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,前年度までの研究の継続に加え,格子問題に基づく暗号方式の研究という比較的今までなじみのなかった研究に本格的に取り組んだ.格子問題に基づく暗号は近年非常に発達してきた分野であるため,膨大な文献を読む必要があった.また,数学的にも非常に深い周題とかかわりがあり,代数的整数論の勉強なども行う必要があった.これらの勉強自体は順調に進んだが,新しい大きい結果を出すところまでは今年度は至らなかった.しかし,既存研究における問題点を発見するなど,今後の研究につながる進展もあった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,幅広く調査を行い,格子暗号に関する知見を広げた.来年度は,継続して,格子暗号の研究を続けていきたいと考えている.格子暗号は,量子コンピュータに対する耐性があると期待されており,このような研究は重要である.また,格子暗号はその信頼性の高い安全性に加えて,完全準同型暗号など今までにない機能を可能にすることが知られている.格子暗号の特性を活かして,マルチパーティ計算などクラウド環境に適した暗号プリミティブの研究も進めていきたいと考えている.また,格子暗号のみならず,離散対数問題や,素因数分解問題に基づく公開鍵暗号,署名や関数型暗号などの研究も継続していこうと考えている.さらに,格子問題の難しさに関しても,計算量理論的に重大な進展が近年しられている.この分野に関しても動向をしっかりと追うとともに,貢献をしていきたいと考えている.
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Research Products
(8 results)