2011 Fiscal Year Annual Research Report
バレット食道と食道腺癌に対する新規マイクロRNA治療の開発
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11J06306
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松崎 潤太郎 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 食道腺がん / CDX2 / FXR |
Research Abstract |
食道腺がんの発生母地であるバレット食道では腸上皮化生を誘導するホメオボックス転写因子CDX2が強発現する点で正常の食道扁平上皮と異なるとされている。ヒト食道扁平上皮細胞HET1AにCDX2発現ベクターを導入した細胞(HET1A+Cdx2)を作製したところ、CDX2の導入によって細胞増殖が抑制されており、食道腺がんにおいてはCDX2が分解されることで細胞増殖が亢進していることが予想された。HET1A+Cdx2に対し、胆汁酸を曝露すると細胞増殖は有意に促進され、p27^<KiP1>発現低下を伴ってCDX2蛋白量が減少した。核内胆汁酸受容体であるFXRのアゴニスト刺激でも同様の現象が認められた。胆汁酸によるCDX2蛋白の減少はproteasome阻害薬により遮断され、胆汁酸はHET1A+Cdx2においてCDX2のproteasome分解を促進することがわかった。さらにp27^<KiP1>の翻訳を抑制することでoncomiRとして機能することが知られているmiR-221/222に注目した。HET1A+Cdx2ではコール酸ないしFXRアゴニスト曝露によりmiR-221/222発現は上昇した。またpre-miR-221/222 Precursorを細胞内導入することでFXR刺激をせずともp27^<KiP1>の発現低下とともにCDX2蛋白分解が促進され、一方anti-miR-221/222 inhibitorを導入するとコール酸曝露下でもCDX2分解が誘導されなかった。よって胆汁酸はFXR活性化とmiR-221/222発現亢進を介して、食道細胞におけるCDX2蛋白分解を促進させると同時に細胞増殖を亢進させることがわかった。これは胆汁酸が、CDX2の機能を抑制、すなわち細胞の分化段階を未分化な形質へとシフトさせる作用を有していることを示唆しており、この機序がバレット食道の悪性転化に関与すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より注目していたみR-221/222がCDX2を発現する食道上皮(バレット食道~食道腺がん)の分化度を制御していることを示す新知見が得られ、食道腺がんの新規治療標的となる分子を同定し得た点で、研究の目的に合致した成果が着実に得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
食道腺がん細胞株OE33において、FXRアゴニストがmiR-221/222発現を増加させるか否かを検討する。またOE33におけるanti-miR-221/222 inhibitorによる抗腫瘍効果をin vitroで検討する。さらにOE33の腫瘍細胞塊をNOGマウス(NOD/Shi-scid,IL-2RγKOマウス)の背部皮下に移植した系でもanti-miR-221/222 inhibitorによる抗腫瘍効果を検討する。またバレット食道および食道腺がんのヒト検体におけるmiR-221/222,p27^<KiP1>,CDX2発現の相関についても検討する。
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