2011 Fiscal Year Annual Research Report
DNAバーコードによる東南アジア非季節性熱帯林の植物―植食者群集の構造特性の解明
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11J06333
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸本 圭子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | DNAバーコーディング / 東南アジア / 非季節性熱帯林 / 植食性昆虫 / 群集構造 / 寄主植物 / 相互作用 / 昆虫群集 |
Research Abstract |
本研究は、東南アジア非季節性熱帯林の植物-植食性昆虫の相互関係と、その関係を形成する要因の解明を目指す。平成23年度は、1)調査地での昆虫試料の採集、2)寄主植物DNAの抽出・解析、3)昆虫のDNAバーコーディングによる種分類を実施した。 1)8月、11月にマレーシア・サラワク州・ランビルヒルズ国立公園に行き、それぞれ10日間程度滞在した。調査地では、林冠部で灯火採集を行い、それぞれ約100個体の植食性昆虫(ハムシ科成虫)を採集した。試料は、国内でDNA抽出・解析を行うため、サラワク州森林局の許可を得て国内に持ち込んだ。 2)本研究では、一般的によく使われる2種類の植物ユニバーサルプライマーを使って寄主植物DNAの増幅・解析を行い、その手法を確立させた。それによって、より多くの既存の植物データを使って寄主植物の同定が可能になった。また、短いDNA断片中の塩基配列の変異を高感度に検出することができるSSCP法(一本鎖構造多型)を使って、1個体の昆虫から複数種類の植物DNAを検出することに成功した。実験の結果、対象個体の約半数で複数の植物を利用していることが確認され、一連の実験がより精度の高いものであることが示唆された。これらの手法は精度の高さに加えて汎用性を有し、関連研究のモデルケースとなりうる。 3)これまでに複数のハムシ種を対象に、それぞれ10個体前後の個体からDNAを抽出・解析し、種分類を行った。その結果、外部形態をもとにした分類では1種とされていたいくつかの種で複数の種に分類されることが確認された。熱帯の林冠部に優占する植食性昆虫で、DNAバーコーディングをもとに種分類した研究はこれまでなく、本研究で実施した種分類法が有効であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で計画していた昆虫の体内から寄主植物のDNAを抽出して同定する手法には技術的な問題点が多く残されていたため、平成23年度は技術の改良に取り組んだ。技術の確立には多少時間がかかったが、問題点を克服し、より精度の高い実験プロトコールを完成させたことに進展がみられた。野外調査や研究成果発表については、計画通り順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は技術の改良を中心に研究を進めてきたが、今後は確立した実験プロトコールに基づいて、より多くの昆虫試料を対象に寄主植物DNAの抽出・解析を実施する。それらの集めた昆虫と寄主植物双方のDNAデータをもとに、植食者の寄主植物への特殊化の程度を分析する。 【計画の変更】 平成23年度中に解析に必要な昆虫試料の75%程度を集めることができたこと、実験プロトコールの改良により実験室内の作業が増えたことを考慮して、平成24年度に2回予定していた野外調査を1回に変更し、国内でDNAの抽出・解析を重点に行う。
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