2012 Fiscal Year Annual Research Report
マツカワメラノコルチン受容体(MCR)のヘテロマー形成の可能性
Project/Area Number |
11J06342
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小林 勇喜 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Xenopus tropicalis / マツカワ / メラニン凝集ホルモン / 黒色素胞刺激ホルモン / 細胞内シグナル / Gタンパク質選択性 / ヘテロダイマー / 体色調節 |
Research Abstract |
【Xenopus tropicalisを用いたMCHシステムの解明】 未解明であったMCHR2aと2bに関して、百日咳毒素を用いた細胞内Ca2+測定によりGタンパク質共役能を調べた。その結果、MCHRの一次構造とGタンパク質共役能から2aは哺乳類MCHRに近いことが示唆された。一方、2bは一次構造が魚類型MCHRに近いものの、Ca2+測定系に加えて、pERK、p70S6、cAMPアッセイ等でもシグナルの変動は認められなかった。また、シングルセルPCRにより、皮膚の黒色素胞では1bと2bが発現することを明らかにした。そこで、X.tropicalis-MCHを用いて皮膚の培養実験を行ったところ、黒色素胞が低濃度で弱く凝集し、高濃度で拡散することを明らかにした。以上より、培養実験で観察された複雑な体色調節にはR1bとR2bが相補的(ダイマー形成等により)に関与していると考えられる。現在はこの現象解明のために、タグを付加した各MCHR発言ベクターを構築している。 【マツカワ・メラノコルチン受容体(MCR)のヘテロマー形成の可能性】 ヘテロマー形成を探るためにMC1Rおよび5RのN末端にタグ(FlagまたはHA)を付加したプラスミドを作成し、タグ付加により受容体機能が変わらないことを確認した。これらをCHO細胞に単導入あるいは共導入後、MCRの細胞内シグナルとして一般的なcAMP量の測定により、MSR類に対する作用を評価した。その結果、MC1R、5Rそれぞれに対し、α-MSHはDes-Ac-α-MSHと比べてEC50値が10倍以上低い、より鋭敏な反応を示した。受容体共導入時では、Des-Ac-α-MSHは各受容体の単導入時と比べてcAMP産生を増強した。一方、α-MSHを添加した場合、逆にcAMP産生は大きく低下した。これらの結果は、皮膚における培養実験の結果と一致する。さらに、共導入時において両受容体が細胞膜に共局在し、加えて、免疫沈降法による生化学的解析により、MC5Rの免疫沈降画分にMC1Rも検出された。即ち、MC1Rと5Rが共導入時にヘテロダイマーを形成すること、そしてこれに対するα-MSHを介した情報伝達系活性が低下することを示唆する結果を得た。以上より、本研究で見出したマツカワ皮膚における生理作用には、様々な要因の関与が推察されるが、「MC1Rと5Rのヘテロダイマー形成」が重要な役割の一端を担うと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の目的に記載した内容に関しては、ほぼ終了した。加えて、研究過程において興味深い知見(Xenopu stropicalis MCHR2bのシグナルが検出されない)を見出し、既にこの現象解明のために着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
Xenopus tropicalisを用いた研究に関して:MCHR2bの細胞内シグナルが検出出来なかったことから、単独では機能しない補助的な受容体である可能性がある。そこで、皮膚において共発現する1bとの関係を調べる。即ち、1bと2bを共発現させた培養細胞を用いて、細胞内局在や、細胞内シグナルへの影響を精査する。 マツカワを用いた研究に関して:基本的に方針転換は無い。ヘテロダイマーを提唱する際、細胞膜上における受容体発現量が重要となる。よって、MCIRと5Rの単導入時あるいは共導入時における、各MCRの膜発現量をフローサイトメトリーにより精査する。
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