2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J06433
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 大 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 計算論的神経科学 / 意思決定 / ベイズ推論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒトや動物の行動に影響を与えると考えられる確信度という指標が、脳内でどのように表現及び学習されているかを解明することである。 当該年度は、環境の変りやすさに対する確信度を組み込んだベイズ意思決定モデルがサルの行動実験を説明できるかどうかを二つのモデルを用いて議論した。二つの選択肢から一つを選び、選択に応じて確率的に報酬が与えられる摂餌課題をサルが行なって得られた行動特性との整合性を検証した。これは実施計画で想定された課題とは異なるが、同様に豊富なデータが得られている課題であり、目的遂行に適している。最初に報酬が二値のベルヌーイ試行に対してベイズ最適に振舞う単純なモデルを考えた。このモデルは環境が定常的であるという仮定を持つ。この仮定は、環境から得られる情報を遠い過去のものも含め全て信頼するということに対応している。シミュレーションとそのデータを解析し、サルの行動との対応付けを行い、このモデルは行動実験と矛盾するという結果が得られた。次に、モデルがどれくらい環境が変わりやすいと仮定しているかを定量化するパラメータを導入した。このパラメータは、モデルが過去に得られた情報をどれくらい信頼するかという一種の確信度となる。上記と同様にシミュレーションとデータ解析を行い、パラメータを調整することで、サルの行動実験結果を説明できることが示された。これら二つのモデルの結果から、サルは確信度を用いた学習を行っていることが分かった。また、確信度の強さが学習量ひいては学習速度に違いを与えることが分かった。 単純なモデルに確信度を組み込むことで実験結果が説明できるようになるという事は、確信度の表現と学習を解明するにあたって重要な意味を持つ。なぜなら、単純であるがゆえ神経回路モデルとの対応付けが容易となり、確信度がどう実装されうるかの洞察を与えることができるからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
確信度というものをベイズ推論に基づく意思決定モデルの中に自然に組み込むことができ、サルの行動実験を説明できる単純かつ合理的で数理的に取り扱い易いモデルが得られた。この結果は、目的である確信度が神経回路でどう表現、そして学習されているかを解明し、ベイズ推論と神経回路による計算の橋渡しをするための重要な足がかりとなるものであり、大きな進展が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに得られたベイズ意思決定モデルでは、確信度の学習は行われていない。そのため、学習まで考慮したモデルの構築が必要になると考えられる。また、当初の予定通りに神経回路モデルとの関係性についても研究を行う。学習をどう組み込むかは単純ではない問題であるが、神経回路モデルの分野で知られる学習係数の学習を行うメタ学習との関連などから考察を進めようと考えている。
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