2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J06433
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 大 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 計算論的神経科学 / 意思決定 / ベイズ推論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒトや動物の行動に影響を与えると考えられる確信度という指標が、脳内でどのように表現及び学習されているかを解明することである。 今年度は、環境状態の遷移確率というものが、脳内の神経回路でどのように学習されるかということについて研究を行った。遷移確率を学習することによって、神経回路は将来どの状態が観測されやすいか、という確信度を表現可能となる。脳内に存在していると考えられているヘブ則と活動依存的なシナプス減衰という二つのメカニズムを用いた神経回路モデルを提案し、解析計算と数値シミュレーションを用いて遷移確率の学習が可能であることを示した。すなわち、このモデルは将来状態の確信度が学習できることを意味する。また、この神経回路モデルは、実施計画で想定されていたランダムドット刺激の方向弁別課題において、サルの外側頭頂間野ニューロン活動と同様の活動をすることを示した。 さらに、前年度の結果である環境の変わりやすさに対する確信度、との関連について調べた。ここで、環境とは遷移確率に対応するため、遷移確率が予告なしに変化する場合のシミュレーションを行った。前年度と同様に、このモデルは環境変化後の学習が遅いという問題があることが分かった。これを改善するためには、環境に対する確信度パラメータに対応するものを導入する必要がある。そして、脳内での存在が示唆されている適格度トレースという、過去の状態を記憶する機構を導入することで、学習速度が改善されることが判明した。これは、適格度トレースが環境の変わりやすさに対する確信度を実装している可能性を示唆している。 まとめると、状態の確信度を表現・学習し、実験結果を説明することのできる神経回路モデルを提案し、また、前年度の結果との対応を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
将来状態の確信度の表現と学習を行うことのできる神経回路モデルを提案し、このモデルがサルの神経活動を説明できることを示した。また、前年度の環境の変わりやすさに対する確信度が神経回路レベルでどう表現されているかという手がかりを得ることができた。これらの結果は、ベイズ推論と神経回路による計算の関係性の解明というもう一つの目標達成のためにも重要なものであり、大きな進展が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究で、環境の変わりやすさと環境状態の変化に対する確信度を実装する神経回路モデルを得ることができた。ただし、この神経回路モデルは、その確信度を用いた意思決定を行うという部分についてはまだ研究が十分でない。そのため、この確信度を用いた意思決定を行う神経回路モデルを解明する。そして、前年度に提案したベイズ意思決定モデルとの対応を議論する。
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