2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト乳児における行為と情動の共有理解およびコミュニケーションに関する発達研究
Project/Area Number |
11J06449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福山 寛志 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 養育者-乳児インタラクション / 対乳児行為 / 動作の休止 / アイ・トラッキング |
Research Abstract |
目的 ヒトの大人は、乳児に接するときに動きや表情を誇張する。特に、大人の行為呈示の途中や終わりに見られる動作の休止は、乳児の注意を大人の顔などに引きつける効果があると考えられる。本研究は、養育者と乳児のインタラクション場面において、大人の行為の誇張(対乳児行為)が乳児の注意を引きつけ、行為理解を促進するのかを検証するため、(1)乳児の行為が大人の行為呈示に与える影響、および(2)大人による行為呈示中の動作の休止が乳児の視線パターンに与える影響を解析した。 方法 (1)乳児(生後6ヶ月および12ヶ月)およびその養育者に机を挟んで対面してもらい、養育者には玩具の遊び方を乳児に自由に呈示してもらった。 (2)アイ・トラッカーを用いて、大人のモデルが3つの人形を容器に運ぶ様子を乳児に呈示し、視線パターンを記録した。モデルは、人形を容器に入れた直後に自分の動作を止めた。 結果 (1)乳児の行為が養育者の行為呈示に与える影響 6ヶ月児に対する養育者の行為呈示は、乳児の手の動きに大きく影響を受けた。一方、12ヶ月児に対しては、乳児の全身の動きが養育者の行為呈示に影響を与えた。乳児自身の身体運動については、12ヶ月児の方が6ヶ月児よりも身体の各部位を協調して動かしていた。 (2)大人による行為呈示中の動作の休止が乳児の視線パターンに与える影響 モデルが人形を移動させている時よりもモデルが動作を止めた時にモデルの顔を長く見たのは12ヶ月児のみだったが、6,12ヶ月児ともにモデルが動作を止めた時にモデルの顔と手元の操作を見比べる視線がより多かった。 考察 (1)の結果は、養育者が、乳児の運動発達の段階に合わせて行為の呈示の仕方を調整していることを示唆している。 (2)の結果は、大人が乳児に接するときの行動特徴が、乳児の注意を大人の顔や行為に巧みに引きつけている可能性を示している。今後、養育者の行為呈示の特徴や乳児の視線パターンが乳児の行為学習などに与える影響を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
養育者と乳児とのインタラクションにおいて、乳児に対する養育者の働きかけ方が乳児の運動発達の影響を受けていることを示唆することができたが、具体的な働きかけ方の質的な検討はまだおこなえていない。養育者が乳児の運動を模倣するような行動がどの程度生起しているのか。そうした特徴が乳児自身の行為発達、他者の行為や情動の理解の発達を促進しているのかどうか、今後検証していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、養育者による呈示の仕方の特徴を時空間解析により抽出し、その特徴が行為の種類や乳児の月齢によって異なるかを検討する。乳児の反応については、運動情報、養育者の顔や玩具への視覚的注意、笑顔の生起をコード化し、それらが次に生起する養育者の呈示の特徴をどの程度予測するか(乳児の行為に時空間的に随伴しているかどうか、など)を検討する。 また、養育者の乳児に対する行為呈示特徴として知られる「時間的休止(身体動作の一時休止)」に着目した検討をおこなう。この特徴が、乳児の視覚的注意にどのように影響するかを、自動視線計測装置を用いて検討する。たとえば、養育者による呈示が、目的達成時または目的達成前に休止する場合、行為や行為者の顔への乳児の注意の向け方は変化するのだろうか。また、その注意パターンは行為の分節化を促しているのか、検討する。
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