2012 Fiscal Year Annual Research Report
多様な神経細胞の生み分けに関与する転写因子カスケードの解明
Project/Area Number |
11J06520
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
瀬戸 裕介 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 小脳 / 運命決定 / プルキンエ細胞 / マウス |
Research Abstract |
Olig2などの転写因子の機能についてより深く知るために、その発現パターンをより詳細に解析した。その結果、Olig2は神経幹細胞が盛んに分裂しているときだけでなく、幼弱なプルキンエ細胞がCorl2を発現するようになるまで発現が続く事を明らかにした。このように、Olig2が分裂後の神経細胞においても働いている事を示唆する結果が得られたため、Olig2ノックアウトマウスにおいて、神経幹細胞の状態を調べたところ、予想と異なる興味深い現象が観察された。このノックアウトマウスではプルキンエ細胞の数が減少し、インターニューロンの数が増加する事から、昨年度までに明らかにしたインターニューロンの分化に積極的に関与している因子Gsh1の神経幹細胞での発現が増加している事を予想していたが、実際はその発現領域の拡大は起きていない事が分かった。この結果は、Olig2遺伝子の欠損が神経幹細胞の時間形質には影響を与えることなく、細胞の運命決定に影響を与えている事を意味する。つまり、野生型のマウスでは、プルキンエ前駆細胞の運命はOlig2によってプルキンエ細胞になるよう拘束されているのに対し、Olig2ノックアウトマウスにおいてはその細胞運命の拘束が解かれ、プルキンエ前駆細胞の運命が分化の途中でインターニューロンへと転換してしまっている可能性を示している。 Olig2ノックアウトマウスにおけるインターニューロンの増加は特に腹側で顕著であることから、外因性因子の影響を受けて、プルキンエ前駆細胞の運命が変更を受けている事が考えられる。実際、過去に別のグループの研究は、異なるサブタイプのインターニューロンの運命決定は最終分裂の後の周囲環境によって影響を受けている事を示唆している。本研究の結果は、上記の運命決定のルールがOlig2遺伝子を欠損したプルキンエ細胞の運命決定にも適用できる可能性を示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Olig2の機能や発現パターンの解析から、神経細胞の運命決定様式について、新たな研究の切り口を見いだした。 今後、Olig2の下流遺伝子を明らかにする事で、その具体的な分子機構が明らかになることが期待できるため、この評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度はOlihg2の下流遺伝子群を明らかにする。中でも、環境感受性を決めている各種受容体などに着目し、その機能などについて明らかにしていく。また、新たなin vivoの組織培養系を立ち上げ、組織周囲の外的環境を操作する等して、細胞の運命に影響を与える因子の探索を両方向から進めていく。それに加え、in vivoで組織の構造を変化させる遺伝学的手法を確立し、環境因子の分泌源の同定を試みるつもりである。
|