2013 Fiscal Year Annual Research Report
多様な神経細胞の生み分けに関与する転写因子カスケードの解明
Project/Area Number |
11J06520
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
瀬戸 裕介 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 小脳 / 神経幹細胞 / 転写因子 / 運命決定 |
Research Abstract |
本年度はDNAのアナログであるBrdUを利用し、bHLH型転写因子Olig2とホメオドメイン型転写因子Gsh1に関する遺伝子改変マウスの小脳における神経幹細胞の状態を解析した。これまでは、Olig2やGsh1そのものを神経幹細胞の状態を調べるための指標として用いていたため、これらの遺伝子に関する遺伝子改変マウスでは神経幹細胞の状態を解析することが困難であった。しかしながら、神経幹細胞のBrdU取り込み能と各種抑制性神経細胞の文化の初期段階で発現するマーカー遺伝子を利用することでこの問題を解決した。その結果、Olig2やGsh1に関する遺伝子改変マウスでは発生の各時期におけるプルキンエ細胞と抑制性インターニューロンの産生比率が異常になることが明らかとなった。また、これらのマウスの小脳には構造的な異常が見られていることから、神経細胞全体の総産生数ではなく、各種の神経細胞間の産生比率の異常によって脳の構造異常が起きうるということを本研究では示すことが出来た。 また、本年度は、胎生期小脳におけるOlig2の発現様式をこれまでより詳細に解析した。その結果、胎生期小脳においてOlig2はプルキンエ細胞の前駆細胞が神経幹細胞の状態にある時だけでなく、ややプルキンエ細胞へと分化しつつある段階でも発現していることが明らかとなった。この結果は、Olig2がプルキンエ細胞の分化の過程でも何らかの重要な機能を果たしていることを意味している。 本年度は、以上の結果をまとめ、2報の論文を国際的な学術雑誌に報告することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではこれまでにOlig2とGsh1という転写因子に注目し、小脳の神経細胞の多様性を生み出す細胞生物学的な仕組みを明らかにすることが出来ている。しかしながら、まだこれらの遺伝子の分子生物学的な作用機序については研究の余地を残している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はOlig2およびGsh1の下流遺伝子群とその機能を明らかにする必要がある。そのためには、各種遺伝子改変マウスの小脳をサンプルとしたマイクロアレイ解析などを行う必要がある。
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[Journal Article] Temporal identity transition from Purkinje cell progenitors to GABAergic interneuron progenitors in the cerebellum.2014
Author(s)
Seto Y, Nakatani T, Masuyama N, Taya S, Kumai M, Minaki Y, Hamaguchi A, Inoue YU, Inoue T, Miyashita S, Fujiyama T, Yamada M, Chapman H, Campbell K, Magnuson MA, Wright CV, Kawaguchi Y, Ikenaka K, Takebayashi H, Ishiwata S, Ono Y, Hoshino M.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 5
DOI
Peer Reviewed
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