2012 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞の分化開始機構の解明と白血病幹細胞を標的とした分化誘導療法への応用
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11J06534
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高井 淳 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 転写因子 / 遺伝子発現制御 / 造血幹細胞 / DNAメチル化 / 血球分化 / 白血病幹細胞 |
Research Abstract |
【結果:サイレンサー領域の欠失は造血幹細胞の赤血球分化を誘導する】 前年度までにGATA1のサイレンサーの機能として、DNAメチル化維持酵素であるDnmt1をリクルートすることで、Gata1遺伝子座のDNAメチル化レベルを高い状態に維持し、GATA1の転写活性化を抑制していることが明らかとなった。そこで、サイレンサーの生理的な意義を検討するため、サイレンサー領域を欠失させたマウスを作製し、解析を行った。フローサイトメトリーの結果から、サイレンサー欠失マウスの造血幹細胞は野生型と比較して著しく低下していた。その一方で、赤芽球の割合は2倍に上昇していることが分かった。また、赤血球以外のリンパ球や顆粒球の割合は低下していた。サイレンサー欠失マウスの造血幹細胞を採取し、GATA1のmRNAを調べた結果、GATA1の発現が5-6倍に増加していた。次に、細胞のコロニー形成能を見る目的でサイレンサー欠失マウスのCMP(common myeloid progenitor;骨髄球形前駆細胞)のコロニーアッセイを行った。その結果、サイレンサー欠失マウスのCMPでは、コロニー系性能が著しく低下し、CFU-E(赤芽球コロニー形成単位)の割合が増加していた。以上の結果から、サイレンサー領域の欠失によって造血幹細胞でGATA1が過剰発現し、赤血球への分化が促進することがわかった。また、赤血球分化の促進により、造血幹細胞が枯渇すると考えられた。今回の結果から、造血幹細胞と同様な性質を持つ白血病幹細胞でGATA1を過剰発現させれば、赤血球への分化を促進させることで、白血病幹細胞が根絶できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度得られたサイレンサー欠失マウスのライン化に成功した。これにより、胎児だけではなく成獣での解析も可能となった。サイレンサー欠失マウスを解析した結果、造血幹細胞の枯渇と赤芽球・巨核球の分化亢進という表現系が観察された。従って、昨年度の目標であるサイレンサー領域欠失マウスのライン化、血液学的解析に関しては達成出来たと考えている。また、サイレンサー領域の欠失変異体を作製し、レポーターアッセイを行った結果、3.2kbであったサイレンサー領域を1.0kbまで狭めることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
サイレンサー欠失マウスは貧血のために出生率が低く、ラインを維持すること、白血病発症マウスとの掛け合わせが困難であった。そこで、今後は出生したマウスにエリスロポエチンを打つことで貧血を改善させ、出生率の上昇をはかる予定である。これにより、安定して成獣マウスが得られるようになるため、サイレンサー領域欠失マウスと白血病マウスを交配させ、白血病幹細胞でのGATA1過剰発現により、白血病幹細胞が赤血球に分化するかどうか検討することが可能となる。また、エリスロポエチンによるレスキュー実験が失敗した時に備え、条件付きサイレンサー欠失マウスの作製も行う予定である。
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Research Products
(2 results)