2011 Fiscal Year Annual Research Report
平面固定トリアリールボランを鍵とする機能性π電子系の開発
Project/Area Number |
11J06543
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
櫛田 知克 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ホウ素 / π電子系化合物 / 蛍光 / X線結晶構造解析 / 時間分解分光 / 理論計算 / 構造固定 / 軌道相互作用 |
Research Abstract |
本研究の鍵となる平面固定トリフェニルボランの基礎的な性質を解明することを目的に、その反応性および光物性について検討を行った。 反応性についての研究では、この化合物と塩基あるいは求核剤との反応を検討し、用いる試剤によってそれぞれ異なる反応様式を示すことを見出した。すなわち、平面固定トリフェニルボランに水素化カリウムあるいはLiTMPを作用させたところ、これらは塩基として働き、ベンジル位での脱プロトン化反応が進行し、カリウムあるいはリチウムを対カチオンとしてもつ平面固定ボラタアントラセンが得られた。一方、より求核性の高いt-BuLiを用いたところ、ホウ素上の一つのベンゼン環の脱離を伴った置換反応が進行し、ボラシクロファン型の生成物が得られることが明らかとなった。この反応は、t-BuLiがホウ素中心に求核攻撃して生成するt-Bu-ボラート中間体を経て進行していることが、反応溶液の^1Hおよび^<11>BNMR測定の結果から示唆された。これらの反応の生成物は、各種スペクトル測定およびX線結晶構造解析により同定し、その構造や基礎物性、電子構造についても明らかとした。 また、光物性についての研究では、この化合物の興味深い二重発光特性を見出した。これらの発光帯についての知見を得るために、時間分解分光測定を行ったところ、平面固定ボランは励起状態において少なくとも二つの安定な状態をとり得ることを示唆する結果を得た。そこで、励起状態における構造最適化およびTD計算を行ったところ、これらの二つの励起状態構造に対応すると考えられる平面型とボウル型の構造が見出され、これらからの発光波長が実測とよい一致を示した。以上の結果から、平面固定ボランは励起状態において二つの安定構造をとり、それぞれからの発光によって特異な二重発光を発現すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の鍵分子である平面固定トリフェニルボランの反応性や光物性といった基礎的な性質について解明することができた。今回得られた結果は、この平面固定ボランを機能性材料として応用するにあたって大きな足がかりとなるものであり、期待通り研究が進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平面固定ボランから誘導されるボラシクロファン誘導体について、その特異な構造的・電子的特徴を評価するために、π骨格を拡張した誘導体を合成し、その構造や紫外可視吸収および発光特性、電気化学特性などの物性を明らかにする。 また、特異な二重発光特性をもつ平面固定トリフェニルボラン骨格を拡張した誘導体を合成し、これらの光物性を検討するとともに興味深い発光特性を発現する光機能性分子への展開を図る。 この他、平面固定トリフェニルボランの還元特性などのさらなる性質を解明し、これを活用した含ホウ素機能性材料の創出を目指す。
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Research Products
(4 results)