2012 Fiscal Year Annual Research Report
口腔扁平上皮癌における転写因子RUNX3の役割とその発現制御機構解析
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11J06562
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
常松 貴明 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | RUNX3 / Head and neck cancer |
Research Abstract |
本研究の対象である転写因子RUNX3は多くの固形癌において癌抑制遺伝子として知られているが、我々はこれまでに口腔癌においては、その過剰発現は逆に癌の悪性形質を促進することを見出してきた。我々の発表論文に続いて皮膚癌、悪性黒色腫、卵巣癌でも同様な報告がなされるに至っている。したがって本研究の意義や重要性はますます高まってきていると考えられる。本年度は転写因子RUNX3の口腔癌における癌化での役割やメカニズムの詳細及び予後に与える影響をより詳細に明らかにすることを目的とし、研究計画に基づき、以下のとおり実施した 1.RUNX3の下流に働く遺伝子の同定 我々はRUNX3がRUNX familyと呼ばれる転写因子群に属すことから、標的遺伝子の転写を実際に制御することで機能していると仮定した。実際にDNA結合領域に変異を挿入したRUNX3を過剰発現させた細胞株では我々が過去に報告したapoptosisの抑制や足場非依存性増殖の促進などの表現型が認められなかった。そこで過去に作製したRUNX3の発現の低い口腔癌細胞株にRUNX3を遺伝子導入し、安定性にRUNX3を高発現する細胞株と親株の遺伝子発現を網羅的にマイクロアレイ法にて解析した。この2つの遺伝子発現プロファイルを比較し、発現変動を示すものをRUNX3標的遺伝子候補とした。これらのなかでもRUNX3の機能に関与すると考えられるもの、また種々の口腔癌細胞株でのRUNX3の発現と相関関係にあるものを絞り込み、IGFBP2を同定した。現在、RUNX3がIGFBP2プロモーター領域に直接結合するか検討を行うため、ルシフェラーゼを用いたレポータアッセイ法を構築中である。 2.RUNX3トランスジェニックマウスの作製 昨年度までにKeratin14(K14)プロモーターを有する発現ベクターにRUNX3 cDNAを組み込み、このDNAをマウス胚にインジェクションし、トランスジェニックマウスを作製した。本年度はこのトランスジェニックマウスを継続的に飼育し、自然発癌をモニターした。結果、長期的な飼育のみでは野生型、RUNX3トランスジェニックマウスともに自然発癌を生じなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RUNX3の下流に働く遺伝子の同定に関し、当初の計画ではルシフェラーゼアッセイを完了させる予定であったが、この実験系の構築に予想以上に時間を要しているため。ただし、トランスジェニックマウスの解析に関してはおおむね予定通り進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.RUNX3の下流に働く遺伝子の同定 引き続き、レポーターアッセイを用いて検討を行う。また、RUNX3標的遺伝子の口腔癌における役割を詳細に解析する。 2.RUNX3トランスジェニックマウスの解析 自然発癌は観察されなかったため、DMBAなど皮膚発癌モデルとして用いられる薬剤を用いて、作製したトランスジェニックマウスの発癌への影響を検討する。
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Research Products
(7 results)