2011 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙マイクロ波背景放射を用いた初期密度揺らぎの非ガウス性の研究
Project/Area Number |
11J06598
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 良貴 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員DC1(数物系科学)
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Keywords | 宇宙論 / 宇宙マイクロ波背景放射 / 非ガウス性 / 密度揺らぎ / 大規模構造 / 相互相関 / ミンコフスキー汎関数 |
Research Abstract |
星や銀河、銀河団といった宇宙の大規模構造を成すこれらの天体の種となっている、初期密度揺らぎは宇宙の極めて初期に起きたであろうインフレーションと呼ばれる現象を経て作られただろうとされている。この初期密度ゆらぎは初期宇宙を解明するための数少ない手段の一つであり、多数存在するインフレーションの機構を解明する大きな手掛かりとなり得るとされている。この初期密度揺らぎの統計性質は標準的な宇宙論モデルではガウス統計に従うとされている。しかし、多数あるインフレーションモデルの中にはガウス統計からのずれ、すなわち「非ガウス性」を示唆するものもある。この統計的性質の違いは宇宙の晴れあがりと呼ばれる時期の宇宙の姿を反映している宇宙マイクロ波背景放射(CMB)や銀河や銀河団といったその後の宇宙の大規模構造を構成する天体の形成に対しても大きな影響を与える。 本研究はこの非ガウス性が大規模構造に与える影響に注目し、様々な観測量を想定し非ガウス性に対する制限を推定した。これまでの研究との大きな違いは、様々な観測量を想定し異なる観測量との間の相関の情報をすべて考慮したこと、そして、これまでの多くの研究は非ガウス性の効果をガウス統計からの1次のずれの効果としていたところを、さらに高次の効果まで考慮し制限を推定したといった点にある。 我々の解析から、異なる観測量の間の相関の情報を取り入れることは効果的であり、制限の改善が見込められるであるということが分かった。また、高次の項による効果は1次の項による効果と強く縮退しており、高次の項を考慮するかどうかによって非ガウス性に対する制限に大きく影響を与えることが確かめられた。 これらの結果は、本研究におけるCMBを用いたミンコフスキー汎関数による非ガウス性の制限とは独立なものであり相互確認のためにも重要なものである。さらに、これらの異なる手法を組み合わせることでより詳細に初期密度揺らぎの非ガウス性に関して議論することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究遂行のための文献等による事前調査、計算コードの開発等に関してはほぼ完了し現在解析をおこなっている段階にあり順調に進んでいるといえる。一方で、議論を共に行う予定にあった共同研究者が突然亡くなられたことから、その代わりとなり議論を行う共同研究者を立てるまでに時間を要し議論がさほど進まなかった。その点をふまえて、やや遅れているという自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
宇宙マイクロ波背景放射の観測を用いた非ガウス性の制限とし、ミンコフスキー汎関数による解析を行う。まずは既存のデータを用いた解析を行い非ガウス性に対する制限を行うと同時に、将来観測を想定した制限の推定を行う。そして、現在観測が行われているPlanck衛星のデータ公開に向けた解析の準備を行う。 これらの結果を大規模構造の観測から得られものと比較し、非ガウス性の制限に対して最適な観測量、解析方法等について議論する。
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Research Products
(5 results)