2011 Fiscal Year Annual Research Report
体験論パラダイムに基づく景観評価と景観資源の適正配置モデル
Project/Area Number |
11J06606
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
杉本 興運 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 空間評価 / 観光関心点 / 写真投影法 / 評価構造 / カーネル密度推定法 / 空間的自己相関 / デジタルカメラ / 地理情報システム |
Research Abstract |
人々の知覚に基づいた空間評価の研究における新たなアプローチとして、デジタル機器と地理情報システムを用いた手法を展開した。 まず、都市型観光レクリエーション空間を対象に、あらかじめ2つの回遊コースを設定して観光者をそれぞれのコースに振り分け、GPSとデジタルカメラを携帯して好印象な風景や対象を撮影するように指示した。得られた撮影地点の空間分布の集積を密度分布として可視化したことで、対象地域内で多くの観光者が興味を示す空間を特定した。また、それと同時に観光者の関心集積の空間的偏りを把握することができた。さらに、撮影行為の時間分布の集積度合いを可視化したことで、それぞれの回遊コースにおける観光者の回遊行動時の景観認識と環境デザインとの相互関係について有用な知見を得ることができた。 次に、観光評価地図作成における空間的可視化表現の手法を検討するために、平面空間上での密度推定法と道路ネットワーク上での密度推定法を比較した。さらに、観光者の関心集積の空間的特性をより詳細に表現するために、写真を9種類のカテゴリー別に分類し、それぞれに特徴となる色彩を割り当て、一定空間ごとにポイントデータを集計して地図上にチャートグラフによって可視化した。 最後に、新たにGPSと電子コンパスを内蔵したデジタルカメラを調査機器として導入し、得られたポイントデータをGIS上で可視化・分析するための方法論的研究を行った。まず、撮影地点のみのポイントデータ群と撮影地点・撮影方向・心理評価値が同時に表現されたポイントデータ群を比較した。そして、心理評価値をポイントデータの属性値とみなし、空間的自己相関分析を適用することで、似た心理評価値をもつポイントデータが集積している場所を抽出した。これにより、観光者の関心集積の多寡のみに着目した空間の評価構造に対し、観光体験の感動の度合いを考慮した階層性を取り入れることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、観光者が関心を示した地点(撮影地点)の空間分析による観光空間評価の方法論的検討が、主な目的であった。観光者の関心集積の空間的パターンの発見や可視化において地理情報科学の手法が非常に有効であることが示され、本研究は研究目的の通りに順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新たにGPSと電子コンパスが内蔵されたデジタルカメラを調査機器として導入したため、撮影方向の情報をポイントデータの属性値として地理情報システム上で扱うことが可能となった。このようなデータは角度の情報をもつデータとして表され、値が0から360を循環するという性質をもっている。そのため、データの分析には方向統計学などの特殊な方法を適用しなければならない。今後は、撮影方向データの基本的な統計的分析法と、撮影方向を属性値としたポイントデータ群に対する空間分析の適用を検討していく。さらに、評価された空間の特徴やデザインから観光者の空間認識について深く考察し、観光空間の管理計画への応用可能性を追及していく。
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