2012 Fiscal Year Annual Research Report
体験論パラダイムに基づく景観評価と景観資源の適正配置モデル
Project/Area Number |
11J06606
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
杉本 興運 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 空間評価 / 観光関心点 / 観光ポテンシャル / 空間的自己相関 / 円周統計 / モデリング / デジタルカメラ / GIS |
Research Abstract |
観光者の現地体験に基づいた空間評価の高度化のために、GPSと電子コンパスを内蔵したデジタルカメラを調査機器として導入し、得られた関心点(写真撮影地点のポイントデータ)をGIS上で可視化・分析するための方法論を追及した。また、選好された景観や空間の特性について考察した。 具体的には、まず、これまで撮影地点の情報のみで表現されていた関心点のポイントデータを情報的に拡張した。関心点の空間オブジェクトとして撮影地点と撮影方向を、その属性情報として感動の度合いなどの心理評価値を付加することを提案した。これにより、現実の観光空間における観光者の感動体験の空間的特徴をより詳細かつ躍動的に表現することが可能になった。 次に、日比谷公園での現地実験によって収集した観光者21人の関心点556個に対し、ローカルな空間的自己相関の分析(Local Moran's I指標を使用)を行い、自身と周辺が共に好ましさ評価値の高い(低い)関心点のクラスターや、周辺と統計的に有意に異なる評価値をもった関心点のクラスターを抽出した。また、それぞれのクラスターに対して円周統計学を応用し、あるスポットに集積する関心点が平均的にどの方向を向いているのかを定量化した。これらの分析より、関心点の密度値が高い空間が複数あるとしても、感動のレベルおよび関心の方向の集中度に大きな差異があることが判明した。そして、集積した関心の質的差異を生じさせる空間の環境的要素について考察を加え、選好される空間の階層性を明らかにした。 最後に、これまでの研究で得られた知見や課題を基に、より適切な観光ポテンシャルを可視化するための指標の開発を行った。具体的には、感動の度合いを考慮し、かつ実験条件差のバイアスを除くための重み得点を設計し、それを関心点に付加してから密度推定を行った。重み得点は、1)評価対象の好ましさ、2)撮影対象の種類に基づく重み、3)撮影枚数の逆数、4)スタート地点からの距離、5)撮影時刻の逆数の、5つの重み要素の積として構築される。結果、重み得点を付加した関心点の密度分布図の方が、重み得点を付加しない場合よりも適切な観光ポテンシャルの地図を作成できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関心点を示すポイントデータの情報的拡張の提案、関心点群への空間統計や円周統計の応用の有効性を証明、集積した関心点群の特徴差とそれを生じさせる環境要素の解明、という従来の空間(景観)評価研究にはない革新的な成果を残すことができた。また、これらの一段階前の研究が、国内外の有名な学術誌に掲載され、一定の評価を受けた。したがって、当初の研究計画通り、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは分析手法の検討が主体であったため、都市公園など小領域の観光空間を中心に調査を行った。より広いスケールの観光空間での手法の適用可能性について言及していく。また、本研究によって観光者の観光地に対する評価構造の空間的特徴を明らかにしたが、観光者が現実空間をどのように捉えているかという観光者の空間認識のメカニズムを考察するところまでは進んでいない。今後は、観光者の関心の内容をより深く分析し、観光行動や景観認識の先行研究を参考にしながら、本研究の成果で新たに得られた知見を整理し、論文としてまとめていく。
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