Research Abstract |
修士課程の間に進めていた,相補的インフレーション機構に関する研究が4月にまとまり,学術雑誌(PRD)に投稿,5月に受理された.この研究内容について,国際会議や夏の学校で発表を行った(13参照). その後,新たな研究課題を模索するために,最近の論文に目を通し,現在盛んに行われている研究や,今まで行われてきた先行研究について理解を深めた.特にインフレーションを起こすインフラトン場として,素粒子物理から動機づけられるヒッグス粒子や擬南部-Goldstoneボソン(PNGB)を用いたインフレーション模型に興味を持ち,これらの模型の利点や問題点,問題点を解決する代替案として最近研究されている模型などを,具体的に式を追って理解を深めた.素粒子物理から動機づけられるこれらの粒子を,インフラトン場として扱うのは自然であるが,標準的なスローロールインフレーションの枠組みでは,パラメータのスケールの問題が現れるため,インフラトン場と重力の結合や,インフラトン場の自己相互作用,複数場の機構などを考えることでこれらの問題を解決しようとする様々なモデルが,現在までに提唱されている.このような背景をもとに,現在新しい研究課題として,スカラー場のGalileon相互作用項を考えたインフレーション模型についての解析に取り組んでいる.具体的に,このインフレーション模型に関して,バックグラウンドのダイナミクスから再加熱に必要な場の振動が起こるかどうか,また,摂動を考えた上でインフレーション中に生成される揺らぎが,WMAP衛星による宇宙背景放射(CMB)をはじめとする現在の観測と,どの程度整合性があるかの制限を解析している. 対外活動としては,外部の人々と議論することでより視野が広がり,理解が深まると考え,新学術領域研究の若手メンバーで構成される勉強会への参加や,後期から東大の宇宙論・相対論セミナーに参加し,研究に欠かせない人脈作りも積極的に行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
素粒子物理から動機づけられるインフレーション模型の理解と解析は順調に進展しているが,もう一つの宇宙の加速膨張を引き起こすダークエネルギーに関しては,他の研究者の論文を読んで理解を深める他は,新しい研究として進展はない.国内および海外での研究発表や,他大学の研究者を交えた研究会やゼミへの参加で,人脈が広がった.
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めているGalileon相互作用項を含むインフレーション模型の研究に関して,chaoticポテンシャルとPNGB型ポテンシャルを用いて,上記の解析からパラメータの制限や,CMB温度揺らぎの観測からの制限を出す.5月あたりを目標に論文にまとめ,学術雑誌に投稿する予定.7月にスウェーデンで開催される国際会議,9月の物理学会などで,同研究内容を発表したい. また,現在新たにCMBの観測を始めているPlanck衛星の結果が,来年あたりには得られると期待されるため,現在扱っているモデルを含めた様々なインフレーション模型の選別・評価ができるように備えたい.
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