2011 Fiscal Year Annual Research Report
婦人科がんにおける免疫逃避機構の解明及び新規治療法の開発
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11J06969
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西尾 浩 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 卵巣癌 / 免疫逃避 / NF-kB / IL6 |
Research Abstract |
腫瘍免疫逃避は免疫療法の確立において克服すべき課題の一つである。腫瘍免疫逃避を克服するためには、癌における免疫抑制性因子の発現メカニズムを詳細に解析し、その病態を解明することが重要である。我々は、卵巣癌細胞でのNF-κBの活性化が、サイトカインIL6の産生を通して樹状細胞を抑制し腫瘍免疫逃避に関与する可能性を示した。 まず、卵巣癌細胞株において、免疫抑制物質の発現を網羅的に解析し、同時にNF-κBの活性化状態を評価した。卵巣癌細胞株では、IL6の発現とNF-κBの発現が有意に相関し、また卵巣癌患者検体においても、免疫組織化学においてIL6とNF-κBの発現は有意な相関を示した。 次にNF-κB阻害剤を用いてIL6産生が低下するかを検討した。卵巣癌細胞株において、NF-κBの阻害によりIL6の産生が低下した。続いて、NF-κBが樹状細胞(DC)に対して与える影響を解析した。IL6を産生する卵巣癌細胞株の培養上清を含む培養液中でDCを培養すると、LPS刺激時のIL12、TNFαの産生が抑制され、IL-10の産生は亢進し、癌培養上清下ではDCの機能が抑制されることが判明した。このDCの機能は、NF-κB阻害剤(DHMEQ)を用いることで回復した。また、培養上清中のIL-6を中和することでも回復したことから、IL-6が関与していることが分かった。最後に、卵巣癌細胞株をヌードマウスに移植し、NF-κBの活性化がin vivoでDCに影響を与えるか評価した所、DCのT細胞活性能を減弱させることが分かった。 以上より、卵巣癌におけるNF-κBは、IL-6などの免疫抑制性物質を介して、DCの機能を抑制し、癌の免疫逃避に関与する可能性が示された。よって、NF-κBシグナルに対する阻害剤は、卵巣癌細胞株の免疫逃避の解除にも有効な治療となりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた細胞株を用いた解析から担癌マウスモデルでの解析も行うことができ、計画通りに進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスモデルでの結果がヒト卵巣癌においても同様であるかを検討する。具体的には卵巣癌患者の血清、組織検体を用いて、サイトカインの産生量の解析および免疫組織化学などから、患者の予後および病期との関連を解析する。また、癌細胞特異的にNF-κBを阻害する、drug delivery systemを用いて、正常組織に対する副作用を少なくする試みをマウスモデルなどを用いて解析を進める。 またこれらの免疫逃避機構は卵巣癌に限ったものであるのか、他の癌腫の細胞株及び臨床検体を用いて検討を行う。
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Research Products
(6 results)