2012 Fiscal Year Annual Research Report
新奇な基底状態をとる強相関電子系の光誘起ダイナミクス
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11J07023
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
能上 絢香 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 強相関電子系 / 光誘起ダイナミクス |
Research Abstract |
(1)研究背景・目的 強相関電子系における光誘起ダイナミクスの研究では、電荷、スピン、軌道、格子の自由度と光誘起ダイナミクスの相関が注目されている。本研究では、軌道整列系V酸化物AV_<10>O_<1>5(A-Ba,Sr)に着目した。BaV_<10>O_<15>では、T_c=123Kで軌道整列しV三量体を形成する構造相転移が起こるが、SrV_<10>O_<15>は、そのような構造相転移は起こらない。これまでの研究で、BaV_<10>O_<15>では、三量体相から三量体のない相への光誘起相転移が起こったが、SrV_<10>O_<15>では、格子歪みと結合した電子の励起状態が弾性波でサンプルの奥行き方向へ進むことを明らかにした。この結果を踏まえ、本研究では、BaV_<10>O_<15>の壁開面における光誘起ダイナミクスの温度依存性を測定した。 (2)研究方法 フェムト秒反射型ポンププローブ分光測定を行った。光源はTi:sapphireレーザー(パルス幅:約130fs,エネルギー:1.56eV)で、プローブ光の反射率変化を観測した。プローブ光は循環水に集光して波長変換し、0.9eV-2.5eVで測定できる。 (3)研究成果 ポンプ光照射後の反射率変化は、T>T_cでは時間に対する振動が現れて、振動の周期はプローブ光の波長に依存するという時間依存性が観測された。これより、BaV_<10>O_<15>でも転移温度より高温では、格子歪みと結合した電子の励起状態がサンプルの奥行き方向へ進んでいると考えられる。また、振動の振幅は、高温から転移温度へ向かって温度を下げていくと、減少していくことが観測された。転移温度より高温においても局所的にV三量体が形成されているため、格子歪みと結合した電子の励起状態が進んでいくことが妨げられていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画していた研究は行うことができて、その内容についての論文発表までできたので。
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