2012 Fiscal Year Annual Research Report
冷却原子気体のBEC-BCSクロスオーバーにおける多体効果の理論的研究
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11J07049
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 晋平 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 冷却原子気体 / 少数多体系 / Efimov状態 |
Research Abstract |
2006年にEfimv状態という3粒子束縛状態が冷却原子気体の実験で観測されてから、冷却原子気体での少数多体系の研究が急速に進展している。Efimv状態の束縛エネルギーは、3体パラメータと呼ばれるパラメータが決定している。この3体パラメータの大きさは系の詳細に強く依存し、従って実験で用いる原子等が変化すればEfimov状態の束縛エネルギーも激しく変化すると信じられてきた。しかし2011年に5種類の異なる原子によるEfimov状態の実験を比較したところ、5%精度で完全に一致することが発見された[7]。これまで「なぜ3体パラメータが原子によらないユニバーサルなパラメータなのか?」という物理的起源の解明がされていなかった。 私は共同研究者と共に、Efimv状態の波動関数の変形に注目することで、ユニバーサルな3体パラメータの物理的起源を解明した。原子種の変化をモデル化するように様々なポテンシャルに対して3体問題を数値的に解いた結果、ポテンシャルの詳細によらず、3粒子が近づいた際に波動関数の形が急激に変形し、この変形が3粒子間に実効的な斥力を与えることを発見した。この斥力ポテンシャルのため3粒子が近づく確率が小さく、各原子の電子構造等の詳細に依存しないユニバーサルな性質をEfimv状態が示す。この考察に基づき、我々はEfimov状態の解析的な変分波動関数を考案し、これが波動関数の変形や斥力ポテンシャルを再現し、3粒子問題を解いた結果と定量的に良く一致することを発見した。本研究の成果は査読中ではあるが[6]、既に国内・国際会議等で多数発表した。 また共同研究者とともに、冷却原子以外の系においても、ユニバーサルな少数系の研究を行える可能性を理論的に提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2011年の秋、冷却原子気体において新しいユニバーサルな物理が見つかった。これまでユニバーサルではないと思われていたEfimov状態の3体パラメータが原子種に依存しないという性質が実験的に発見され、この現象の理論的な解明が重要な理論的課題となった。我々はこの重要なテーマに取り組み、その物理的起源を解明した。この研究は当初予定した研究よりも遥かに重要度が高く、インパクトのある研究であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究してきた、3粒子束縛状態、4粒子束縛状態等少数系の物理が、多体物理にどのような興味深い効果を引き起こすか研究する予定である。特に、冷却原子気体の多体系の実験において、3粒子束縛状態が重要な役割を果たす系を研究する予定である。
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