2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J07188
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中田 亮一 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 希土類元素(REE) / 水-岩石反応 / 酸化還元状態 / 安定同位体比 / 化学状態 |
Research Abstract |
<研究(1):原油中の希土類元素(REE)>これまで殆ど報告のない原油中のREE存在度についてデータベースの確立を初期目標として行っており,石油資源開発から秋田県の申川油田と由利原油田,北海道の平取油田の試料を提供して頂き,それぞれの原油中のREEを測定した.また,原油の生成過程におけるREEの分配挙動を模擬した実験も行っている.これらの結果は原油の熟成に伴ってREEが有機相から水相に放出され,堆積岩へと移行していく可能性を示唆しており,油田がREE鉱床となり得ることを示している. <研究(2):水-岩石反応温度計としてのユーロピウム(Eu)異常の解釈>海洋研究開発機構(JAMSTEC)横須賀本部にて高温・高圧下での水-岩石反応実験を行う予定だったが,岩石を用いずにREE溶液のみで予備実験を行ったところ,REE溶液濃度が減少していた.これは,反応容器にREEが吸着した可能性を示しており,現状では高温・高圧下での水-岩石反応実験によって正しい値が得られないという事が判明した. 従って,実験計画を変更し,まずは低温(<100℃)での実験を行う予定である. <研究(3):古酸化還元指標としてのセリウム(Ce)異常の精密化>Ceの取り込まれ方には,(1)Ce(III)がマンガン酸化物に酸化されながらCe(IV)として吸着,(2)Ce(III)がCe(IV)に酸化されてCe自身を主成分とする沈殿物CeO_2を形成,(3)水酸化鉄などへの吸着(酸化を伴わない)が,(3)→(2)→(1)の順により酸化的な環境で起きると期待される.また,それぞれの過程における固液間でのCe同位体分別は(3)→(2)→(1)の順により大きくなると考えられた.室内系で模擬実験を行ったところ,それぞれの過程における固液間でのCe同位体分別は(3)≦(2)<(1)であり,(3)と(2)はCeの価数が異なることから,化学状態と安定同位体比を組み合わせることで,より精密な酸化還元指標となることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究(2)については計画変更を余儀なくされたが,研究(1)では天然の原油試料分析と模擬実験の結果が得られ,研究(3)では予定通り室内系での模擬実験における化学状態と同位体比変動の結果が得られた.さらに、Ce安定同位体分別機構を明らかにすべく,ランタン,ネオジム,サマリウムについても同様の実験を行い,REEにおいて同位体分別を支配する要因が明らかになりつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
研究(1)については,今後も様々な研究機関等に依頼し,原油および貯留層(岩石)のREE濃度を測定することで,有機地球化学と無機地球化学の境界領域で生じる現象を明らかにしていく.研究(2)については,実験容器に問題があるために,高温・高圧下での実験において信頼性のある値は得られないため,まずはテフロシ容器を用いて100℃以下での水-岩石反応実験を行う.先行研究では,46℃と70℃で違いが見られているため,100℃以下での実験の方がより敏感な水-岩石反応温度計となり得る可能性がある.研究(3)については,まずは現世の天然試料を用いて酸化還元指標としてのCe異常の精密化を目指す.
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Research Products
(9 results)