2011 Fiscal Year Annual Research Report
三次元トポグラフィを援用した疲労損傷機構解明に基づく複合型高機能接合技術の開発
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11J07239
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
種子島 亮太 広島大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 疲労 / 高張力鋼板 / スポット溶接継手 / 破壊力学 / ランダム変動荷重 / レインフロー法 |
Research Abstract |
本年度得られた研究成果として次の三点が挙げられる,(1)有限要素解析によるスポット溶接継手の破壊力学的検討.(2)ランダム変動試験システムの開発.(3)外荷重を指標としたスポット溶接継手の累積疲労損傷評価技術の確立. まず,一点目に負荷荷重形式の異なるスポット溶接継手に対し,それぞれスリット先端の応力状態を有限要素解析によって評価した.さらに,スリット先端の応力拡大係数を導出し,各継手の疲労特性を破壊力学的に検討することによって,これまでの応力基準による評価と比較し,より定量的な評価を行った.次に,実際の乗用車は時々刻々変化する荷重状態の下稼動していることから,実働状態における継手の疲労特性を評価するためには同状態を再現するための試験機構を構築することが必要不可欠である.このことから,本研究ではランダム変動試験システムの開発に着手した.具体的には,定常ガウス性ランダム過程モデルを用いた擬似ランダム波形を作製し,それらをパーソナルコンピュータを介して試験制御装置に出力することによって試験機を駆動させた.また,試験体に作用した荷重を抽出後,得られた電圧信号をレインフロー法を適用し常時計測することによって疲労負荷に伴う累積損傷値の算出を行った. 最後に,実際にランダム変動荷重条件下におけるスポット溶接継手の疲労試験を実施し,同条件下における疲労特性を検討するとともに疲労寿命評価手法の確立を試みた.具体的には,ランダム変動荷重は種々の平均荷重を有する荷重が試験体に作用することから,試験荷重比の影響について評価した修正S-N曲線を用いることによって一般的に許容範囲とされる累積損傷結果を得ることができる事を示した.同提案手法は試験体に作用する外荷重のみによって評価できる点において極めて簡便であり,かつ比較的精度の高い結果を得られることから,実用上,非常に重要な評価法であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
荷重負荷形式の異なるスポット溶接継手の溶接部近傍における応力状態を評価し,各継手スリット先端の応力拡大係数を導出することによって破壊力学的にスポット溶接継手の疲労特性を定量的に検討した.また,実働状態における疲労特性を検討するため擬似的なランダム変動荷重波形の作製を行った.さらに,継手に作用する変動荷重を計測する手法としてレインフロー法を適用した計測手法を開発した.以上のランダム変動試験システムを確立した上で疲労試験を実施し,同条件下におけるスポット溶接継手の疲労損傷評価技術を提案した. 上記の研究成果は申請書にある研究計画にほぼ沿っているため,本研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
11.で述べたランダム変動荷重条件下における疲労損傷評価手法は継手に作用する外荷重を指標とした評価技術であるが,溶接部近傍における局所ひずみ挙動に着目することによって損傷評価の精度向上を目指す,また,本研究の主眼であるスポットおよびレーザー溶接継手の疲労破壊機構に基づき両者を併用した複合型接合構造の提案を行い,開発接合構造体に対しランダム変動荷重条件下における疲労試験を実施することによって同構造物の疲労特性を評価する.さらに,試験範囲を超長寿命領域に拡大することによって将来的な実用に向けた耐久信頼性評価を実施する.
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