2011 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴ラマン分光法によるチトクロムc酸化酵素のプロトンポンプ機構の解明
Project/Area Number |
11J07254
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
坂口 美幸 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 呼吸鎖 / プロトンポンプ / 共鳴ラマン / ヘム / チトクロムc酸化酵素 / ミトコンドリア / 生体エネルギー変換 / 共役機構 |
Research Abstract |
呼吸鎖の末端酸化酵素であるチトクロムc酸化酵素(CcO)のH^+ポンプはATPの合成に寄与する重要な反応である。CcOの酸化還元中心の一つであるヘムaはH^+ポンプの駆動部位と提案されている。ヘムa側鎖のホルミル基、7位プロピオン酸基そしてヒドロキシファルネシルエチル基はH^+ポンプ経路のアミノ酸残基と水素結合を介してつながっている。本研究はH^+ポンプの反応機構解明を目指し、ヘムaのH^+ポンプに伴う構造変化を共鳴ラマン分光法により明らかにする事を目的とした。特にH^+ポンプに関わるヘム側鎖た着目した。側鎖の振動モードのうちホルミル基以外は帰属が確立されていないので、一年目に取り組んだ。 帰属を行うために、着目する側鎖と水素結合を形成するアミノ酸残基を置換した変異体を作成し、これに伴うスペクトル変化を検出した。変異体は細菌のCcOを用いて作成した。7位プロピオン酸基の帰属にはY406F-、ヒドロキシファルネシルエチル基にはT50A-、S417A-CcOを用いた。変異体の発現系は平成22年度に既にその一部が完成しており、平成23年度には全ての変異体において完了し、タンパク質を調製する事が出来た。そして共鳴ラマンスペクトルの測定を行った結果、WT-変異体の差スペクトルにおいてY406Fで364-cm^<-1>に、T50Aにおいて1251-cm^<-1>に有意の差を検出した。これらはそれぞれの波数から7位プロピオン酸基の変角振動とヒドロキシファルネシルエチル基の振動モードを含むヘムの面内振動に推定された。さらにT50Aで検出された差はS417Aでは検出されなかった事から、ヒドロキシファルネシルエチル基とS417との相互作用は極めて小さいと示唆された。これは結晶構造と異なる結果であった。 以上は側鎖に由来する振動モードの帰属をしたのに加え、CcOのような巨大な膜タンパク質のラマンスペクトルにおいても変異体を用いた帰属が十分に可能である事と示した。 酵素反応の時間分解測定に際し必要な基礎実験を行った。そして平成24年度からはCcOのプロトンポンプに伴う構造変化を追跡する事が可能な状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度分に計画した「ヘムa側鎖の振動モードの帰属」と「酵素反応を追跡するための予備実験」を実施し両者とも無事完了し、計画通りのペースで進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はフロー法を用いた時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定を行い、ヘムaのH^+ポンプに伴う構造変化の検出を試みる。研究計画には特に変更なく進めるつもりである。 励起波長は観測する振動モードを選択する重要なパラメータであるが、複雑に重なりあったスペクトルを解析するためにいくつかの励起波長を検討する必要がある。このような検討も含めて測定には比較的大量の酵素標品を用いると想定されるので、十分な量のサンプル調製を行う。
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Research Products
(3 results)