2011 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエに対する寄生バチ毒液の殺虫作用はなぜ寄生完了で消失するか?
Project/Area Number |
11J07256
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
降幡 駿介 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 寄生バチ / Asobara / ショウジョウバエ / 共生ウイルス |
Research Abstract |
寄生バチにとって宿主とは,唯一の栄養源であると同時に生息場所でもあるため,十分に成長するまでの間,生かして利用しなければならない.にも関わらず,本研究の対象である内部寄生蜂Asobara japonicaの毒液は,宿主ショウジョウバエ幼虫に対して強い殺虫作用を示す.そして,側輸卵管の液性成分中に,毒液の殺虫作用を解毒する成分が含まれており,これによってハエの死を防いで寄生を成立させている. 今年度の研究において,殺虫成分の実体がポリドナウイルス(PDV)に近縁なウイルスである可能性が示された.PDVは鱗翅目に寄生するハチの共生ウイルスとしてよく知られているが,本種を含むAsobara属との共生は知られていない.また,カリックス腺ではなく毒液中から発見された点,宿主に対する殺虫活性が示唆される点が既知のPDVとは異なっている.これが証明されれば寄生バチ研究における重要な発見であるといえる. 本研究で用いている寄生バチA.japonicaは,毒液殺虫成分の効果を側輸卵管の成分で解毒して寄生を成立させるという,これまで他種では知られていない特殊な寄生戦略をとっている.今回示唆されたPDVに近縁なウイルスの共生は,このような本種の寄生戦略の全容を解明する鍵となるものと期待している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
23年度の研究により,毒液中に含まれる殺虫成分がPDVに近縁なウイルスである可能性が示唆された.これが事実とすると,当初は予想しなかった,これまでの寄生バチ研究では報告例のない新規な発見となる.したがって,当初の期待以上の進展と評価できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は以下のような実験を行う予定である ●NGSを用いたウイルス様粒子の核酸解析を進め,他のウイルスとの類縁関係を推定するとともに,ゲノム構造を特定する ●FITCラベルしたウイルス様粒子のショウジョウバエ血球への感染率の調査,および,ハチ側輸卵管に含まれる解毒成分により感染が阻害されるか否かの確認を行う. ●ウイルス様粒子のポリクローナル抗体を作製し,これを用いたショウジョウバエ体内でのウイルス様粒子の動態を解析する ●HPLC等により解毒成分の単離・同定を行う
|