2012 Fiscal Year Annual Research Report
ガンマ線と近赤外可視偏光・分光の同時連続観測によるブレーザーの放射機構の研究
Project/Area Number |
11J07287
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 亮介 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 活動銀河核 / ジェット / フェルミ衛星 / かなた望遠鏡 / 赤外線検出器 |
Research Abstract |
ブレーザーとはジェットを伴う活動銀河の中でも、特に、そのジェットを正面から観測している天体である。しかし、その放射の元となる電子の加速機構やジェットの構造はよく知られていない。これらを明らかにするためには、両放射成分の時間発展を精度よく調べる必要がある。私はガンマ線衛星フェルミと東広島天文台かなた望遠鏡による多波長同時観測により、ブレーザーの放射メカニズム、特に高エネルギー放射の起源を探ることを目指している。今年度は、ブレーザー天体3C 66Aの多波長同時観測結果について解析を進め、この天体における高エネルギー放射起源を探った。解析の結果、3C 66Aにおいては、その高エネルギー放射起源が従来考えられてきた1つの放射領域からではなく、2つ以上の放射領域からの放射が重なって観測されているという示唆が得られた。従来から考えられてきた放射モデルのあり方に一石を投じるものであり、インパクトは非常に大きい。これらの結果は日本天文学会欧文研究報告誌に掲載された。また、ブレーザー天体CTA 102のガンマ線・近赤外線大増光を受け、光赤外線大学間連携を利用した即時多波長大規模フォローアップ観測を行った。その結果、可視光度・色・偏光度の数時間タイムスケールの同時変動を捉えた。これまで光度と偏光度の同時変化を捉えた観測例は世界的に見ても数例しか報告されておらず、その重要性は極めて高い。また、短期変動成分の偏光度は50%以上にも達し、理論的に予想される偏光度の上限に匹敵する。これはブレーザーのジェット中で非常に磁場の揃った領域から放射が行われていることを示唆する重要なけっかである。これらの結果はTheAstrophysical Journal誌に投稿中である。次期赤外線同時観測装置は分光観測のファーストライトを迎え、性能評価・キャリブレーション方法を確立している最中である。加えて当初の目標であるブレーザー天体の近赤外線モニター観測に向け、そのサイエンス観測を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画より可視・赤外線同時観測の装置の開発が遅れていたこともあり、本来予定していた数ほどの天体の赤外分光モニターは実施できていないが、装置の初期評価を含め順調に観測を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
次期可視・赤外線同時観測装置の初期性能評価・キャリブレーションを進め、継続的な赤外線分光観測モニターを実施する。また、自動観測システムによるモニター観測を継続する。観測結果は即時解析し、同時観測で研究テーマに沿った興味深い天体現象が起これば即座に報告・論文化を進める方針である。
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Research Products
(16 results)