2012 Fiscal Year Annual Research Report
行動ダイナミクスを通したオペラント条件づけの連合学習的理解
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11J07309
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
丹野 貴行 関西学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 並立スケジュール / 反応間時間 / Copyist model / 変動環境法 / ラット / レバー押し |
Research Abstract |
これまでの学習研究では主に定常状態の行動の分析に主眼が置かれてきたが、学習原理のさらなる理解にはそれに至る変容過程(行動ダイナミクス)を解き明かす必要がある。本研究では、(1)行動ダイナミクスを研究する方法論の確立、(2)行動ダイナミクスを説明するモデルの提唱・検証、(3)モデルの神経基盤の解明、の3つを柱としている。 平成24年度の研究ではこのうちの(1)と(2)に取り掛かった。ラットのレバー押しを用いた並立変動時隔スケジュール場面において、左右2つの選択肢から得られる強化割合を、12回の強化子呈示ごとに様々に変化させた(変化があったことのみ信号される)。この変動環境法とよばれる実験場面から、選好は強化割合が変化した直後に一度無選好となり、その後はその新たな強化割合に一致するように負の増加関数的に変化することが示された。この結果は、並立スケジュール場面で頻繁に観察されるマッチング法則(相対反応数は相対強化数に一致する)という定常状態での法則に対し、どのような過程を経てその法則へと至るのかという行動ダイナミクスのデータを提供するものである。 またこれを士台として本研究では、この場面において強化子を特定の反応問時間(IRT)のみに随伴させることの効果を調べた。本研究者が最近提唱したCopyistモデル(Tanno & Silberberg,2012)は、各選択肢への選好は強化割合により決定され、一方でその反応がいつ起こるのかについては、IRTに対する強化により決定されると考える。実験の結果はこの予測に合致するものであり、特定のIRTに対する強化は選好には影響を及ぼさなかった一方、その反応がいつ起こるのかを左右することが示された。 従来の研究では行動が"どこに"対して起こるのかという点のみが注目され、"いつ"それが起こるのかが見過ごされてきた。本研究から、強化子・報酬の直前に位置するIRTがその"いつ"を決定し、そしてそれは"どこに"とは独立したメカニズムにより維持されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、(1)行動ダイナミクスを研究する方法論の確立、(2)行動ダイナミクスの説明モデルの提唱・検証、を目的とした。様々な実験パラメータ値の下での行動ダイナミクスのデータを蓄積し、かつそれがCopyistモデルの予測と合致するものであったという研究成果は、当初の計画通りの進展であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究では強化割合を変化させることを通して行動ダイナミクスを調べてきた。今後はそこから得られた知見の一般性を確認するため、強化子の量を操作した場合における行動ダイナミクスのデータを得ることを予定している。またこれと同時進行でコンピュータシミュレーションにより、Copyistモデルがこれらの実験結果を量的なレベルで説明できることを示していく。
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Research Products
(6 results)