2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規抗癌剤Ecteinascidin 743の効率的合成法の開発
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11J07342
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河岸 文希 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機合成化学 / 天然物合成 / アルカロイド |
Research Abstract |
前年度に合成法を確立した5員環エナミドに対するA環ユニットの立体選択的な導入の検討を行った。基質である5員環エナミド自体が反応性に乏しいことに加え、目的に関して二重結合の異性化やエビ化が懸念されたため、A環ユニットとしては温和な条件でのHeck反応の進行が報告されているジアゾニウム塩を選択し、対応するアニリンのジアゾ化と続くHeck反応を1ポットで行うことを計画した。当初はジアゾ化に関して再現性に問題があり、その検討には困難を要したが、種々溶媒や温度等を検討したところ、まずTHF溶媒中0℃にてアニリンのジアゾ化を行い、続いて系中に5員環エナミドのアセトニトリル溶液を加えることで調製した混合溶媒中、室温にて反応を行うことで目的のHeck反応が再現性よく進行し、A環ユニットの立体選択的な導入に成功した。 得られたHeck反応成績体に対して、生じた二重結合の酸化的開裂を行うこととした。しかしこの二重結合は非常に大きな立体障害の影響で反応性に乏しく、その検討には困難を要した。まず比較的立体障害の影響を受けにくいと考えられるオゾン酸化を行ったところ電子豊富な芳香環の損壊が競合したので、四酸化オスミウムを用いた二重結合のジオール化を試みることとした。先述の立体障害のため検討には困難が伴ったが、最終的にオスミウムのリガンドとしてキヌクリジン、添加剤としてメタンスルホンアミドを加える条件に付すことで反応が円滑に進行し、目的のジオールが単一の異性体として高収率にて得られることを見いだした。 続いてジオールの酸化的開裂を試みた。酸化剤として四酢酸鉛を用いた際には複雑な混合物が得られるのみであったが、THF溶媒中過ヨウ素酸を作用させたところ、ジオールの酸化的開裂と生じたジアルデヒドの水和が進行した環状セタールが高収率にて得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エナミドに対するHeck反応によるA環ユニットの導入、及び高い立体障害を有する二重結合の酸化的開裂に成功した。残るB環の構築を行い、その後の変換に関しては過去の知見を活用することで本天然物の全合成は十分可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず得られたアセタールからのB環の構築を行う。6員環の環状アセタールは報告例に乏しく、その反応性に関しては自ら知見を集めることが必要となるが目的の環構築は十分に可能であると考えている。5環性骨格構築後は過去の報告例を参考に天然物の全合成を達成する予定である。
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