2011 Fiscal Year Annual Research Report
海馬CA3神経回路の動的抑制システムによる入力制御機構の解明
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11J07387
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
酒井 誠一郎 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 海馬 / オプトジェネティクス / チャネルロドプシン / 光学装置 / 神経細胞 |
Research Abstract |
抑制性ニューロンは、局所神経回路の安定性を高めることにより、CA3神経回路における記憶情報処理を調節していると予想される。これら多様な抑制性ニューロンが協調して働くことにより、タイミング依存的なゲートとして樹状突起における入力制御を行っているとする仮説の検証を本研究の目的とした。研究を遂行するにあたり、樹状突起への光刺激入力を行うための要素技術として、多点独立光刺激システムの開発と性能評価を行った。これまでの光刺激装置は、時間的パターンと空間的パターンの両方、さらに多波長の光照射を実現した装置が開発されていなかったが、本研究において開発したプロジェクターベースの光刺激装置はそれらを実現した。この装置について、光強度の評価、および光刺激の空間解像度・時間解像度の評価を、海馬急性スライス標本を用いて行い、本研究の遂行に十分な性能を有していることを確認した。また、この光刺激装置とチャネルロドプシンまたはアーケオロドプシンを組み合わせることにより、神経活動を興奮・抑制の双方向に制御することが可能であり、神経科学研究に大変有用な装置であることを示した。以上の成果は論文および国際会議において発表した。 光刺激装置の開発と並行して、CA3樹状突起の周波数応答特性の解析を行った。チャネルロドプシン2トランスジェニックラットの海馬スライス標本を用いて、0.1-30Hzで連続的に周期の変化する光刺激を行い、その際の膜電位変化を解析したところ、海馬CA3錐体細胞においては放線層領域が他の領域より高周波応答性が高いことが示された。これは海馬で観察される周期的な神経活動において、効率的に情報処理を行うための樹状突起特性であると考えられる。この成果は国内学会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年3月11日の東日本大震災により研究室が被災し、特に遺伝子改変動物の多くを処分せざるを得ない状況で、そこからの復旧におよそ3ヶ月の時間を費やした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は光刺激装置の開発に重点を置いて研究を行ったが、この開発した装置を用いることで本研究課題をより効率的に推進することが可能となった。震災の影響でやや遅れている研究についても、開発した装置の活用によって十分に遅れを取戻し、さらに進展させることが期待できる。海馬CA3神経回路の情報処理における抑制性入力の効果、特にその可塑性が今後の課題である。開発した光刺激システムおよびチャネルロドプシン・アーケオロドプシンを用いることで、これら課題を解決する予定である。
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Research Products
(4 results)