2013 Fiscal Year Annual Research Report
アキラル結晶のキラル結晶への不斉変換と不斉自己触媒反応
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11J07401
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
峯木 紘子 東京理科大学, 総合化学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アキラル結晶 / 不斉発生制御 / エナンチオトピック面 / シトシン一水和物単結晶 / キラル結晶 / シトシン / ホモキラリティー / 不斉の起源 |
Research Abstract |
多くの有機化合物には鏡像異性体が存在し, 生体関連物質であるアミノ酸や糖類にも鏡像異性体が存在する。しかし, 生体を構成するアミノ酸はL型, 糖類はD型であり, 一方の鏡像異性体から構成され, これは生命のホモキラリティーと呼ばれている。これまでホモキラリティーの起源として提唱されているのは水晶や円偏光, アキラルな有機化合物の不斉結晶などが挙げられている。本研究では, DNA, RNA中で遺伝情報の維持・伝達を担う重要な物質の一つである核酸塩基シトシンに着目した。本研究の主目的はアキラルなシトシン一水和物結晶の脱水による不斉発生制御と共に, その脱水過程を明らかにすることである。 本研究により, いかにして不斉結晶が生成し, 不斉の起源として作用してホモキラリティーへと至ったのか議論・検討が可能となると共に生体が共通に利用する物質に不斉起源としての可能性を見出すことができれば, その科学的意義は非常に大きなものとなる。 すでに, アキラルなシトシン一水和物単結晶のエナンチオトピック面から加熱脱水することにより絶対構造を制御したシトシンのキラルな無水和物結晶が得られることを明らかにした。 今回, 脱水手法を検討することにより, 室温でエナンチオトピック面から減圧脱水すると, 加熱脱水した場合とは逆のキラリティーを有するシトシン結晶が生成することを見出した。さらに, アキラルなシトシン一水和物結晶の脱水過程の粉末X線回折測定結果より, 温度の上昇によって結晶構造が変化する際にa軸とc軸の長さが増加することを明らかにした。 以上の成果は, アキラルな核酸塩基であるシトシンのアキラルな一水和物結晶が, そのエナンチオトピック面からの減圧脱水によりキラルな無水物結晶に変換され, 不斉自己触媒反応によりホモキラリティーに至る化学プロセスを具現化したものと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでアキラル結晶であるシトシン一水和物単結晶のエナンチオトピック面から加熱脱水し, 結晶水除去を行うことによりキラル結晶が得られ, 不斉発生制御できることを見出した。さらに, 減圧脱水した場合, 加熱脱水とは逆のキラル結晶が得られることを見出した。さらに, アキラルなアデニンが形成するキラルなアデニン二硝酸塩が不斉自己触媒反応を誘導することを明らかにしている。以上のようにアキラルな核酸塩基やN-(2-チエニルカルボニル)グリシンが形成するキラル結晶が不斉自己触媒反応と組み合わさることにより, キラル分子のホモキラリティーに至る化学プロセスを具現化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アキラルなシトシン一水和物結晶の加熱脱水・減圧脱水によるキラリティー発生機構の解明, およびアキラル結晶からキラル結晶へと不斉発生制御可能なアキラル化合物の探索を引き続き行う。さらに, アキラル化合物からキラル結晶を形成する他の結晶の検討を行う。
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Research Products
(3 results)