2011 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニンによる黒毛和種牛の遺伝子多型に対応した脂肪交雑制御機構の解明
Project/Area Number |
11J07413
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 一史 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | セロトニン / セロトニン受容体2A / ウシ筋肉内脂肪前駆細胞 |
Research Abstract |
家畜における末梢セロトニンの脂肪蓄積への関与をin vitroにおいて詳細に解析するために、当研究室で樹立したウシ筋肉内脂肪前駆細胞(BIP細胞)の分化前後での遺伝子発現をサブトラクション法により比較した。その結果、筋肉内脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化過程でセロトニン受容体2Aが新たに発現することを見出し、セロトニンが牛肉の脂肪交雑機構にセロトニン受容体2Aを介して深く関与することが示唆された。しかしながら、セロトニンのBIP細胞の成熟脂肪細胞への分化への影響は明らかとなっていない。本研究では、セロトニンがセロトニン受容体2Aを介してBIP細胞の分化に関与していることを想定し、セロトニンのBIP細胞分化誘導へ与える影響を解析した。本年度は、研究計画に従い遂行し、以下の知見が得られた。 BIP細胞においてセロトニン受容体2Aの発現解析を行った。BIP細胞への分化誘導培地(5mMオクタン酸,50ng/mlインスリン,0.25mMデキサメタゾン,10mM酢酸,10%ウシ血清)の刺激により、BIP細胞の分化に伴ってセロトニン受容体2A発現が増加した。この分化に伴うセロトニン2Aの発現上昇は、デキサメタゾン刺激により誘導され、デキサメタゾンとインスリンの共刺激により増強されることが明らかとなった。以上の結果より、セロトニンはBIP細胞の分化に影響を与える可能性が示された。 次に、セロトニンのBIP細胞分化への影響を解析した。インスリン(50ng/ml)およびデキサメタゾン(0.25mM)存在下でセロトニン(0~50μM)は、BIP細胞の分化を誘導し、濃度依存的にトリグリセリド蓄積量を増加させた。しかしながら、インスリンおよびデキサメタゾンで刺激していないBIP細胞へのセロトニン刺激は、5μM以上でもトリグリセリド蓄積量に変化を与えなかった。この結果より、セロトニンはデキサメタゾンおよびインスリンにより発現が誘導されたセロトニン受容体2Aを介して、BIP細胞の分化を誘導することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の年次計画は滞りなく実施され、ウシ筋肉内脂肪前駆細胞株BIP細胞において、セロトニンはデキサメタゾンおよびインスリンにより発現が誘導されたセロトニン受容体2Aを介して成熟脂肪細胞への分化を誘導する可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、セロトニン受容体2Aのアンタゴニストあるいはアゴニストを用いて、セロトニンの脂肪細胞分化誘導作用がセロトニン受容体2Aを介した直接的な作用であることを明らかにする。また、遺伝子型が異なる黒毛和種牛血清がBIP細胞の分化へ与える影響の解析を試みることにより、遺伝子多型と脂肪交雑機構との関連性が明らかにする。加えて、反芻家畜における末梢セロトニンの作用を日内変動の解析およびセロトニン投与による生理反応を単胃動物との比較により解析し、セロトニンによる黒毛和種牛脂肪交雑制御機構の解明を試みる。
|