2011 Fiscal Year Annual Research Report
形態の種間差を創出する多様化機構の解明 : 四足動物の指形態形成機構をモデルとして
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11J07445
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
関 亮平 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 発生 / 骨格 / 多様性 / 四肢 / 指 |
Research Abstract |
1.AP-2β遺伝子の機能解析 これまでに私は、AP-2βという遺伝子について「指形成領域における発現期間の長さが、指の長さと相関すること」および「AP-2βの機能阻害によって指の長さが短縮すること」を報告している(学会発表等で報告済)。これらの結果は、AP-2βが指の形態形成に関与することを強く示唆するものである。そこで、本年度はこの遺伝子の機能亢進実験をニワトリ胚に対しておこなった。複数の遺伝子導入法を用いて検証したが、指の過伸長を含む骨格形態の変化は見られなかった。この結果は、AP-2βが単独で機能するだけでは指の伸長には不十分であることを示唆する重要なデータである。 また、AP-2βを機能阻害した際に、四肢形成に重要な役割を果たす遺伝子群のうち、発現状態が変化するものがあるかどうかをin sirtu hybridization法や免疫染色法を用いて検証した。その結果、肢芽の伸長に中心的な役割を果たす遺伝子の発現状態が変化している可能性を示唆するデータが得られた。 2.AP-2α遺伝子の発現解析 また、AP-2αという遺伝子に着目し、発現解析をおこなった。この遺伝子はAP-2βと同じ遺伝子ファミリーに属し、かつAP-2βとヘテロダイマーを形成することが知られている。そこで、AP-2αが指の形成過程においてどのような発現パターンを示すのかを、ニワトリ胚およびマウス胚を用いて検証した。その結果、どちらの動物胚の四肢原基においても指形成領域内に発現が確認された。より詳細な解析が必要となるが、指形態によって、あるいは動物種によって、その発現状態が異なっている様子が観察されており、この遺伝子が担う機能の重要性が予想される。今後、指の形態形成に対してAP-2αがどのような機能をもつのかを明らかにするため、AP-2βの場合と同様な強制発現実験をおこなうことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の影響により3~4ヶ月間の実験の中断を強いられたが、学会発表を複数回おこなえるほどの成果を上げることができた。また、現在投稿中の論文もあることからも、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
ニワトリ胚を用いてAP-2αの機能解析実験を優先的におこない、指の形態形成との関連を検証する。また、AP-2αとAP-2βを同時に強制発現させ、これら2つの遺伝子の量的なバランスが指の形態形成に重要な役割を果たしているかどうかを検証する。一方で、ニワトリやマウスとは異なる指形態を示す動物種(ヤモリやカエルなど)におけるAP-2αの発現解析の観点からも指形態との関連を調べる。以上の結果から指形態との関連が示唆されれば、これらの遺伝子の発現を制御するゲノム上の調節配列に注目し、この配列の特定を試みる。逆に、指形態との関連が見られないような場合は、FGFなどの増殖因子の作用の仕方の観点から、解析を進める予定である。
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Research Products
(5 results)