2012 Fiscal Year Annual Research Report
形態の種間差を創出する多様化機構の解明:四足動物の指形態形成機構をモデルとして
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11J07445
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
関 亮平 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 発生 / 骨格 / 多様性 / 四肢 / 指 |
Research Abstract |
1.AP-2βの機能解析 これまでに私は、AP-2βの機能阻害時に指骨格が短縮することを示していたことから、この遺伝子が四肢発生時に重要な役割を果たしていると予想した。そこで前年度に引き続き、AP-2x9の機能解析をニワトリ胚を用いておこなった。優性不活性型AP-2βをニワトリ胚の肢芽に過剰発現させた上で、四肢発生に重要な遺伝子群の発現状態と細胞増殖・細胞死の割合が変化するかを調べた。しかしながら、現在のところいずれにおいても顕著な変化は見出されていない。 逆に、機能亢進実験として正常型のAP-2βとAP-2αを同時に過剰発現させる実験をおこなった(AP-2β単独では四肢形態に変化は現れないことは報告済)。その結果、過剰な指の伸長は見られず、むしろ短縮した。また、恒常活性型AP-2β(Vp16-AP-2β)による機能亢進実験もおこなったが、現在のところ過剰な指の伸長を示す個体は得られていない。 2.鳥類特異的な遺伝子発現をもたらすゲノム領域の探索 鳥類は、ヒトやマウスに比べ、個々の指の長さの違いが大きい。また、前肢(翼)は他の種には見られない特徴的な形態を示す。しかし、指形成の制御には同じ遺伝子セットが使われているはずである。したがって、鳥類特徴的な指の形態形成には、遺伝子そのものではなく、鳥類のみに存在するゲノム上の調節領域が重要な役割を果たしている可能性がある。そこで、鳥類のみに存在するゲノム領域を、ゲノムの種間比較により抽出し(他の研究グループとの共同研究)、それらの直近にある遺伝子の発現解析をニワトリ胚を用いておこなった。その結果、肢芽内で興味深い発現パターンを示す遺伝子をいくつか特定した。今後は、まずこの発現パターンが鳥類特異的かどうかをマウス胚との比較により検証し、さらにこの発現が鳥類特異的保存配列によるものかどうかをレポーターアッセイにより調査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中にAP-2βの機能の解明には至らなかったものの、今後おこなうべき解析が明確になったことから、一定の成果はあったと評価している。また、ゲノム配列からのアプローチにより、四肢の形態形成に重要と思われる遺伝子をいくつか見出すことができた。筆頭著者の1人として総説を発表したことからも、本研究課題がおおむね順調に遂行されていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子の機能解析については、機能阻害による影響を検出しやすくするために解析方法を見直す。より強力に遺伝子導入と強制発現をおこなうため、エレクトロポレーション法を用いて再解析する。また、本年度、鳥類特異的に保存されたゲノム領域を基点として、四肢形態形成に関わりうるいくつかの遺伝子が特定された。今後はマウス胚およびヤモリ胚を用いてこれらの遺伝子の発現解析をおこなう。これによりニワトリ胚と異なる発現を示す遺伝子をスクリーニングし、その発現が鳥類特異的なゲノム領域により制御されるかを、レポーターアッセイにより検証する。これに該当する遺伝子が見つかれば、この遺伝子の機能解析に取り組みたい。
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Research Products
(11 results)