2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J07684
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
青沼 宏佳 東京慈恵会医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 節足動物 / 蚊 / マラリア |
Research Abstract |
本年度は、ハマダラカにおけるマラリア原虫増殖組織である中腸の構造と、それに吸血が与える影響に着目し、中腸細胞の分布・局在と細胞分化について解析を実施した。マラリア原虫は、吸血によって蚊の中腸内部に取り込まれ、そこでオーキネートへと分化する。オーキネートは運動性をもち、ハマダラカの中腸細胞を通過して中腸体腔側へと移動し、オーシストへと発育する。一方、蚊の中腸は吸血によって大きく膨張し、同時にそれぞれの中腸細胞は強い力で伸展すると考えられる。膨張した中腸では、損傷した細胞の除去、幹細胞の分化を伴う細胞数の調整が起こっていると予測されるが、その全体像は未解明のままである。そこでまず、吸血の前後において、分裂・分化している細胞の存在について検討をおこなった。具体的には、吸血後の蚊にEdUを取り込ませ、中腸における分裂中の細胞核を観察した。これにより、中腸には分裂中の細胞核が存在すること、そしてその数は吸血後に急激に増加し、吸血24時間後では吸血前の約10倍にまで増加することが示された。つまり、蚊の中腸に分裂能・分化能をもつ細胞が存在することを明らかにした。また、マラリア原虫オーキネートの中腸細胞への侵入を観察したところ、分裂中の細胞には侵入していないという結果が得られた。従って、オーキネートは分化した腸細胞にのみ侵入することが示唆された。さらに、これらの分裂中の細胞の多くが中腸体腔側に存在していることも示され、ショウジョウバエにおける中腸幹細胞の位置と類似していることから、蚊における中腸幹細胞であることも示唆された。現在、これらの細胞を含む中腸細胞の種類・構成と、それぞれの細胞の局在について、詳細な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病原体媒介節足動物の体内における、病原体一宿主間相互作用を明らかにする為には、感染組織とその組織における病原体の動態の解析が必要である。本年度は、蚊の中腸が吸血によって膨張する際の伸展刺激と、それによる細胞数の調整に着目し解析をおこなった。その結果、中腸内に吸血刺激によって分裂する細胞が存在することを明らかにし、これが中腸幹細胞であることが示唆された。この結果は、中腸細胞の種類・構成の解明、さらに中腸と病原体との相互作用の解明の基盤となるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から、蚊の中腸細胞において、吸血による刺激が細胞分裂の引き金となっていることを明らかにした。この結果は、病原体侵入による損傷に対する応答のみでなく、吸血刺激に対する恒常性維持によっても、中腸内の病原体がコントロールされていることを示唆している。そこで今後は、このような中腸の恒常性がどのように維持されているのかを詳細に解析し、さらに病原体に対する影響について、更なる解析を進める計画である。
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Research Products
(3 results)