2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J07691
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 友彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | エディアカラ紀 / カンブリア紀 / チャート / 酸化還元 / SSF / 同位体層序 |
Research Abstract |
地球史において最も重要な時代の一つである原生代-古生代境界(約5.4億年前)前後の環境変動・生命進化の解明を目的に、以下の(1)、(2)に焦点を絞り、研究を実施した。 (1)深海の酸化還元環境の解明:原生代末期エディアカラ紀における海洋の酸素濃度増加が、その後の爆発的な生命進化をもたらしたと考えられてきたが、その詳細な時期および過程は不明である。申請者はこれまでの研究で、エディアカラ紀に遠洋深海で堆積したチャートが、酸化的な堆積環境を示す赤鉄鉱を含むことを明らかにした。その鉄化学組成が堆積時の初生的な酸化還元環境を反映しているか検証するために、今年度の研究で、二次的変質によるチャート中の鉄化学組成の変化が定量的に判別可能であることを明らかにした(Sato et al.,2011)。また、鉄化学組成の二次的な変化を考慮し、三畳紀-ジュラ紀における酸化還元環境の推移を明らかにした(Sato et al.,2012)。これらの研究結果は、エディアカラ紀の深海が酸化的環境であったことを支持する。 (2)SSF多様化の原因の解明:古生代初期カンブリア紀における爆発的進化の先駆けであるSSF(Small Shelly Fossils)の多様化をもたらした環境要因の解明を目指し、申請者はこれまでの研究で、SSFを多産する当時の堆積層(中国雲南省)の岩相層序、SSF化石層序を詳細に検討した。今年度の研究で、同地域の同位体層序(炭素、ストロンチウム)を確立した。炭素同位体比による層序対比の結果、従来考えられていたよりも前にSSFの多様化が起きたことを明らかにした。また、ストロンチウム同位体比から、SSFを多産する南中国は他地域と異なり、大陸地殻起源の流入量が多い、閉鎖的な海盆にあったことが示唆された。これらの結果から、「閉鎖的海盆における栄養塩の濃集」がSSFの多様化を駆動した可能性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の海洋の酸化還元環境の指標としての遠洋深海チャート中の鉄化学状態に関する研究成果を、2編の論文として公表したため。また、これまで検討してきたカンブリア系の岩相層序、化石層序に加え、炭素同位体層序、ストロンチウム同位体層序を得ることができたため(現在、論文として発表準備中)。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)REEなど、鉄化学種以外の地球化学プロキシを測定し、異なる酸化還元電位の基準に基づき、過去の深海環境を推定する。また、エディアカラ紀の遠洋深海チャート試料採取地であるイギリス・ウェールズ州において開催されるワークショップに参加し、当時の深海における酸化還元環境について関連研究者と議論を行う。 (2)これまでに得られた同位体層序に加え、微量元素の定量分析を行い、同位体測定値が初生的な海水の値を反映していることを検証する。また、論文の公表および国際学会における発表を行い、議論を深める。さらに、調査地域で得られた層序学的データを近隣地域と詳細に対比するため、中国雲南省における野外調査を実施する。
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