2011 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンの非平衡キャリアダイナミクスを利用した新原理テラヘルツレーザの研究
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11J07762
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 隆之 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | テラヘルツ / グラフェン / 誘導放出 / ポンプ・プローブ測定 / フォトンエコー / キャリア平衡化 / プラズモン |
Research Abstract |
本年度の成果としては、まず、1.光学励起した剥離グラフェンのテラヘルツ(THz)帯での利得特性を実験的に調べた。また、2.リボンパターンを形成したエビ成長グラフェンにおけるプラズモンモードの観測を試みた。1.の実験には、ポンプ・プローブ測定法において検出器として用いている電気光学結晶内で生じたテラヘルツフォトンエコーを利用し、光学励起後、数ピコ秒だけ時間経過したグラフェンにおける誘導増幅放射の観測に成功した。フォトンエコーが光励起からより遅れてグラフェンに入射した際、グラフェンの示すTHz帯利得スペクトルは狭窄化し、また、その利得も減少した。このことから、グラフェンが光学励起されたあと、ピコ秒オーダーよりも早い過程でキャリアがテラヘルツ周波数帯に反転分布を形成し、その後、時間経過により平衡状態に緩和していくキャリアの影響を確認することができた。この結果は数値解析により得られる傾向とよく一致する。この成果は学会にて発表をおこなった。2.の実験については、アメリカRice大学のKono研究室での共同研究をおこなった。6H-SiC基板上にエビ成長後、フォトリソグラフィで形成したリボンパターンを形成したグラフェンについての透過THz波のスペクトル変化を時間分解計測系により測定した。その結果、リボン形成による明瞭なプラズモンモードの顕現を確認することはできなかった。実験系の測定可能周波数帯域が不十分であったことが原因であると考えられる。2.の実験経験および測定結果をふまえ、我々は新実験系を構築している。これは、本年度の研究実施計画に組み込んでいた、赤外ポンプ経路とTHzプローブ経路とを分離した透過型測定系の構築に対応する。 また、光学励起よりも効率よく反転分布を形成可能であると予想される、電気的バイアス印加を動作原理とした電流注入型グラフェンデバイスについても試作・評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リボンパターンを形成したグラフェンのけるプラズモン共鳴の顕現は明瞭には観測できていないものの、電気光学結晶によるフォトンエコーを利用したポンプ・プローブによる測定の結果、光学励起グラフェンのキャリア平衡化を理論的、実験的に観測することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、新しい透過型測定系の構築を進める。その系の完成後は、平面およびリボンパターンのグラフェンについて、詳細なキャリア平衡化およびプラズモン共鳴の顕現を調べる。また、電流注入型グラフェンデバイスの放射特性について調べる。さらに、グラフェンレーザー共振器の設計・数値計算による評価、試作および反射率測定による評価をおこなう。最終的に、共振器構造を導入したグラフェンレーザーを試作し、そのテラヘルツ波放射特性を評価することを次年度の目標とする。
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Research Products
(25 results)