2012 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンの非平衡キャリアダイナミクスを利用した新原理テラヘルツレーザの研究
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11J07762
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 隆之 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | テラヘルツ / グラフェン / 時間分解計測 / 共振器構造 / プラズモン共鳴 / レーザ |
Research Abstract |
本年度の成果としては、1.まず、新実験系の構築をおこなっている。この実験系の完成により、光学励起したグラフェンの光キャリア緩和・再結合過程をより詳細に調べることが可能となる。現在は光源として用意したテルル化亜鉛結晶からのテラヘルツ電磁波発生が観測できていないのが問題点である。これについては代替の光源を用意して、発生の確認をおこなう予定である。その後、テラヘルツ検出および水分除去機構の構築および動作確認をおこない、全体として高感度、高励起強度および光学励起時間可変なテラヘルツ時間分解測定系の実現を目指す。2.また、グラフェンレーザデバイスに導入する共振器構造の設計をおこなった。これは、発生ターゲットである数テラヘルツ電磁波の波長に対応する数10μm周期の凹凸構造をグラフェントランジスタのデュアルゲート電極部分に組み込むことにより、対象の単一波長のみを利得媒質としてのグラフェン領域に閉じ込める分布帰還型の共振器を形成し、テラヘルツレーザデバイスを実現するものである。本構造を導入したデバイスは現在、試作段階であり、完成次第、上記1.の新実験系および既存の周波数分解測定系においてテラヘルツ放射スペクトルの検証実験をおこなう。3.さらに、米国ライス大学での共同研究においてテラヘルツ反射型の時間分解計測系において、グラフェンを周期リボン構造に加工した試料について、プラズモン共鳴現象を起因とする吸収ピークを観測することができた。これは、昨年度の測定においては確認することのできなかったものであり、この現象を利用し、グラフェンの励起効率を格段に向上させる原理を示すことができた。以上の2.および3.は交付申請書の年次計画にある「横型共振器構造の検討」および「プラズモン共鳴機構」にそれぞれ該当するものであり、それらを一体化することで高効率な新原理テラヘルツレーザの実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新実験系の構築はやや遅れているものの、グラフェンレーザデバイスに必要な共振器構造の設計をおこなった点と、昨年度は観測できなかったグラフェンリボンサンプルにおけるプラズモン共鳴の顕現を観測できた点から、本研究は順当に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は構築中の新実験系を完成させ、光学励起グラフェンにおける光キャリア緩和過程についてのより詳細な調査実験をおこなう。また、本年度に設計した共振器構造およびプラズモン共鳴をグラフェンレーザデバイスに組み込み、光学励起型および電流注入型の両面のアプローチから新原理グラフェンレーザデバイスの設計・試作・評価をおこない、設計論として体系化をおこなう。
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