2011 Fiscal Year Annual Research Report
情報の不確実性に頑健な近未来型の動的交通制御システム
Project/Area Number |
11J07829
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和田 健太郎 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 交通工学 / 交通計画 / 自律分散システム / ゲーム理論 / 市場設計 / オークション・メカニズム |
Research Abstract |
本研究は,ボトルネック通行権取引制度(TBP)に基づき,(i)道路階層(高速道路,都市内街路)に応じた動的交通制御方策を構築し,(ii)交通需要の不確実性にロバストなインプリメンテーション法の設計を目的としている.平成23年度では,(i)では都市内街路における制御法の構築に取り組み,(ii)については,より基礎的な段階として,利用者の戦略的行動に対してロバストなオークション・メカニズムの設計を行った. (i)に関する成果は,TBPと自律分散的な信号制御を整合的に組み合せた新たな仕組みの構築である,この研究では,信号交差点を含む都市内街路ネットワークにおける準動的な交通流を対象として,信号スプリットおよび通行権配分を自律分散的に決定する方法論を提案した.そして,制御導入後の均衡交通流配分状態が,総交通費用を最小化する社会的最適配分状態に一致することを示した.さらに,この信号制御の進化的な運用法を示し,その下では交通流のday-to-dayダイナミクスが社会的に最適な状態へ収束することを証明した. (ii)に関しては,まず,(高速道路に対応する)一般ネットワークに対するday-to-dayオークション・メカニズムを構築した.これは,進化的なメカニズムであり,strategy-proof(i.e.,利用者が正直な評価をbid価格として表明することが支配戦略)かつ効率的な通行権配分を達成することができる.もう1つは,複数時点で購入可能な通行権取引市場のオークション・メカニズムである.これは,従来1時点でのみの取引を想定していたTBPを,(予約可能な)複数時点に拡張したものであり,利用者の入札行動だけでなく,市場選択に関する動学的な意思決定も含む.この枠組みに対し,本研究ではstrategy-proofかつ効率的なオークション・メカニズムを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,まず,通行権取引制度に基づく動的な交通制御方策を構築することが目的であるが,高速道路ネットワーク,都市内街路ネットワークへの動的制御法の構築は完了している.残すは都市内街路ネットワークを集約して扱うアプローチであるが,こちらについてもほぼ研究がまとまっている.もう一つの目的である,動的制御法に対するインプリメンテーション法の設計に関しては,その最も基本となる高速道路ネットワークのオーク「ション・メカニズムの設計が完了している.都市内街路ネットワークに対するオークション・メカニズムに関しても上記の基本メカニズムをベースにすることができるため,当初の計画通りに研究が遂行できていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,今後,残された次の課題に取り組む予定である:(1)都市内街路ネットワークを集約して扱うmacroscopic fundamehtal diagramに基づく通行権取引制度の確立;(2)経路列挙を必要としない一般ネットワークに対するオークション・メカニズムの設計.(1)については当初の計画通り研究を遂行できる目途が立っている.(2)については,当初の計画では「交通需要(OD需要)の不確実性」にロバストなインプリメンテーション法を設計する予定であったが,計画変更し,まず「利用者の戦略的行動」に対してロバストなインプリメンテーション法の設計を行う予定である.その理由は,交通需要の不確実性にロバストであっても利用者の戦略的行動に脆弱であればインプリメンテーション法が有効に機能する保証はないためである.ただし,利用者の戦略的行動にロバストなインプリメンテーション法が構築でき次第,当初の目的であった「交通需要の不確実性」にロバストなインプリメンテーション法の設計に取り組む予定である.
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