2011 Fiscal Year Annual Research Report
バイオミネラリゼーションにおける生体高分子が関与した炭酸カルシウムの結晶成長機構
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11J07837
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥村 大河 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生体高分子 / カルサイト / アコヤガイ / タイラギ / 稜柱層 / 透過型電子顕微鏡 / バイオミネラル / バイオミネラリゼーション |
Research Abstract |
生物が関与して形成される固体無機物質はバイオミネラル(生体鉱物)と呼ばれる。バイオミネラルは巧みに制御された構造を持ち、様々な面で無機的に形成された鉱物よりも優れた性質を持つことが知られている。そのような特徴を誘起する大きな要因は、バイオミネラルに含まれる有機物であると考えられている。結晶間に存在する有機物は、結晶が形成される空間を区画することでその形態を制御することが知られているが、結晶の内部に存在する有機物、特に生体高分子が結晶に大きな影響を与えることが最近の研究で示唆されている。そこで、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察や電子線エネルギー損失分光分析(EELS)等を組み合わせることで結晶内に存在する生体高分子を可視化することにより、結晶と生体高分子の相互作用を解明することを目的とした。またそれを明らかにすることは、バイオミネラリゼーション全般における結晶の成長機構の理解に繋がると考えた。 本研究で研究対象としたアコヤガイとタイラギの貝殻の稜柱層と呼ばれる部位は、炭酸カルシウムのカルサイトで構成され、多くの研究がなされている代表的なバイオミネラルである。これらをTEMやEELSを用いて調べると、結晶内の生体高分子の分布や形状に差があることが分かった。アコヤガイでは生体高分子が不均一に分布することで結晶に小角粒界を密に導入していたが、タイラギでは均一に分布しており、小角粒界は観察されなかった。このように、アコヤガイとタイラギでは生体高分子が異なった影響を結晶に与えていることが示唆された。そこで、それぞれの貝殻から抽出してきた生体高分子の存在下でin vitroでカルサイトを形成し、その結晶を評価することで生体高分子の結晶への影響を調べた。この実験でも生体高分子が結晶に与える影響は異なっており、その性質や形態、分布が結晶との相互作用において重要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオミネラリゼーションにおける結晶と生体高分子の相互作用を解明することを目指し、バイオミネラルとin vitroで形成された結晶を比較しながら研究を行った。その結果、多くの新たな結果を得ることができ、そのうちのいくつかを論文として公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまではバイオミネラルに含まれる生体高分子を中心に調べてきたが、今後は様々な合成高分子をin vitroの炭酸カルシウム結晶形成実験において添加することで、結晶と有機物の相互作用を支配する要因を探る。また、それによって形成された結晶の性質についても詳細に調べることで、結晶の性質・構造に影響を与える生体高分子の構成要素について考察する。
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Research Products
(8 results)