2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネいもち病菌マイコウイルスの弱毒化機構の解明とその生物防除資材としての応用研究
Project/Area Number |
11J07853
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
浦山 俊一 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マイコウイルス / イネいもち病菌 / パン酵母 / 生物防除資材 / dsRNA / ウイルスタンパク質 |
Research Abstract |
本研究は、イネいもち病菌弱毒化マイコウイルス(MoCV1)が宿主イネいもち病菌を弱毒化する機構を明らかにし、本ウイルスを生物防除資材として応用することを目的としている。 イネいもち病菌は日本の重要作物であるイネに重大な被害をもたらす植物病原菌であり、世界的にも本菌の防除が重要な課題となっている。Magnaporthe oryzae chrysovirus 1 (MoCV1)は、イネいもち病菌に感染して液胞の巨大化や小胞形成を引き起こすことで宿主菌を弱毒化する2本鎖RNAウイルスである。 今年度は宿主菌の弱毒化を引き起こすMoCV1の遺伝子を同定するため、パン酵母においてMoCV1の各ORFを発現させ、その影響を解析した。その結果、ORF4発現パン酵母において顕著な生育阻害が観察され、ORF4遺伝子が宿主菌の弱毒化因子の一つである可能性が示された。次にORF4タンパク質のパン酵母に対する影響を明らかにするため、2次元ディファレンシャルディスプレイ解析および発現量に差異の見られたスポットのMALDI-TOF/MS解析を行った。既に複数のスポットの差異を見いだしており、MS解析による同定作業を行っている。また、本遺伝子が実際にイネいもち病菌の弱毒化に関わるのかを明らかにするため、イネいもち病菌内でORF4遺伝子を発現させるベクターの構築を行った。現在、イネいもち病菌への導入を試みており、ORF4導入株の表現型観察とイネに対する病原性調査を行う。 本研究に用いた手法は広くマイコウイルスの遺伝子機能解析に利用可能であり、非常に有用である。 今後は、ORF4発現パン酵母およびイネいもち病菌を用い、本遺伝子の作用メカニズムを明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であったイネいもち病菌弱毒化因子の候補としてORF4遺伝子を得ることができた。さらにORF4遺伝子の作用機構を明らかにするための2次元ディファレンシャル解析およびORF4発現イネいもち病菌の作製にとりかかることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画に則り、ORF4遺伝子がパン酵母やイネいもち病菌に生育障害をもたらす作用機構の解明を目指した研究を行う。具体的にはORF4発現パン酵母を用いて2次元ディファレンシャル法を主とした解析を行い、Yeast two-hybrid法の導入も検討する。また、ORF4発現イネいもち病菌を作製した後、パン酵母同様に2次元ディファレンシャル法を用いた解析を行い、ORF4遺伝子が生育障害をもたらす作用機構の解明を目指す。
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