2011 Fiscal Year Annual Research Report
重力理論としてのChern-Simons理論の厳密な量子化
Project/Area Number |
11J07868
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 大悟 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子重力理論 / 位相的場の理論 / M5ブレーン / 局所化計算 / ブレーン量子化 |
Research Abstract |
一般相対論と量子論を統合する量子重力理論を完成させる事は現代物理学の重要な問題であるが、我々の住む空間3次元、時間1次元(3+1次元)の時空における量子重力理論の定式化は大変困難である。これに重要な手がかりを与えるモデルとして2+1次元の重力理論がある。2+1次元の重力理論は3+1次元の重力理論と似通った性質を持つが、一方で、2+1次元の重力理論は古典的にはChern-Simon理論という位相的場の理論により記述でき、その非摂動的性質がより簡単に調べられると期待される。本研究は、Chern-Simons理論の量子化から2+1次元の量子重力理論を定式化する事を目標としている。 近年、このChern-Simons理論に関して重要な発見があった。一つは、Wittenにより指摘された、3次元のChern-Simons理論と4次元の位相的ゲージ理論との対応である。この4次元の理論をDブレーンの系として実現し、弦理論の双対性を用いる事で、Chern-Simons理論や結び目理論に関する新たな知見が得られた。もう一つは、寺嶋-山崎やDimofte-Gaiotto-Gukovにより指摘された、3次元のChern-Simons理論と3次元の超対称ゲージ理論の対応である。これにより、3次元の超対称ゲージ理論から、2+1次元の重力理論、更には3次元の幾何学にアプローチできる。これらの研究の背後には、M5ブレーンという6次元の膜の物理がある。近年、上に挙げた研究も含めて、様々な次元の場の理論の間に対応が発見されているが、これらはM5ブレーンの有効理論のコンパクト化によって理解できると期待されている。 よって、Chern-Simons理論を単体で捉えるのではなく、M5ブレーンを頂点とする様々な場の理論との対応の中に位置付ける事で理解することが重要である。これを定量的、数学的に評価する上で、局所化による厳密な計算や、ブレーン量子化の手法は必要不可欠である。本年度は、このような視点から奥田拓也氏との共同研究を行った。また、関連する研究も同時に進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Chern-Simons理論に関する重要な発見が相次いで、必要な知識が膨大になったため、習得に時間が必要だった。具体的には、Chern-Simons理論と様々な次元の超対称的ゲージ理論との対応をM5ブレーンの視点により理解し、また、それを定量的、数学的に評価する方法として局所化計算とブレーン量子化の方法を学んだ。来年度には、今までの研究成果を発表できると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた知識、及び研究の蓄積があるので、来年度も、「研究実績の概要」に述べた本年度の研究を継続する。つまり、Chern-Simons理論をM5ブレーンを頂点とする様々な場の理論との対応の中に位置付け、局所化やブレーン量子化の手法を用いることで、Chern-Simons理論の量子化を厳密に定式化する事を目指す。
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