2011 Fiscal Year Annual Research Report
スプライシング異常によるPOLDIP3の機能喪失に着目したALS病態機序の解明
Project/Area Number |
11J07914
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
志賀 篤 新潟大学, 脳研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 筋委縮性側索硬化症 / TDP-43 / POLDIP3 / スプライシング |
Research Abstract |
これまでの研究で申請者らは,TDP-43によってスプライシングが制御される新規遺伝子として,Polymerase delta interacting protein 3(POLDIP3)を同定した.POLDIP3は,exon 3のin-outにより,全長型のPOLDIP3-variant1,exon 3欠損型でin-frameの蛋白質を発現するPOLDIP3-variant2の2つのtranscript variantがあることが知られている.申請者らは,TDP-43の発現抑制によりexon 3欠損型であるPOLDIP3-variant2の発現が増加する事を明らかとした. TDP-43には2つのRNA認識モチーフ(RRM1,RRM2)が存在し,SMNやCFTRなど様々なRNAとの結合が報告されている.TDP-43がPOLDIP3RNAと結合するか否かを,RNA免疫沈降法を用いて検討した.結果,TDP-43がPOLDIP3 RNAと結合することが明らかとなった.TDP-43によるPOLDIP3スプライシングをより詳細に解析するため,申請者はRNA認識モチーフの機能を欠損したTDP-43発現プラスミドを作成し,これらがTDP-43発現抑制によるPOLDIP3スプライシング変化を改善出来るかどうかを検討した.TDP-43発現抑制後に野生型TDP-43発現プラスミドを導入することにより,POLDIP3スプライシングの一部改善を認めた.同様の結果は,RRM2機能欠損型TDP-43においても見られた.一方,RRM1機能欠損型TDP-43では,スプライシングの改善は認められなかった.これらの結果から,TDP-43がRRM1を介してPOLDIP3 RNAに結合し,直接的にそのスプライシングを制御していることが示唆された. またこれまでの研究で申請者らは,ALS患者脊髄において異常POLDIP3スプライシングを認めることを見出していた.脊髄運動神経細胞におけるPOLDIP3スプライシングを評価するため,レーザーマイクロダイセクション法を用いて脊髄運動神経細胞をサンプリングし,RNAを抽出し,実験に用いた.結果,健常者群に比較して,ALS患者群では有意なPOLDIP3 variant2の発現増加を認めた.この変化は,培養細胞におけるTDP-43発現抑制時と同様である.一方で,POLDIP3 variant1の発現量には有意な変化を認めなかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,"TDP-43の核外移行による核内でのTDP-43の機能喪失が,POLDIP3遺伝子のスプライシング異常と機能低下を引き起こし,結果としてmTORシグナルの異常を生じ,運動神経細胞死を誘導する",という仮説を検証し,ALS病態機序を解明することである.今回の申請者の研究成果は,ALS患者脊髄運動神経細胞においてPOLDIP3遺伝子のスプライシング異常を明確に示した.加えて本成果は,ALSの診断や予後のバイオマーカーに繋がる可能性のある結果を残しており,初年度としては問題なく研究が進展していると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
通常,POLDIP3 variant2の発現量は,POLDIP3 variant1に比べて圧倒的に少ない.今回申請者は,variant2の発現量がALS患者運動神経細胞において増加していることを示した.申請者は,このPOLDIP3 variant2が,ALSの新たなバイオマーカーとなる可能性があると考えている.脳脊髄液におけるPOLDIP3 variant2量を測定できる方法を確立することで,ALS診断や予後の評価に寄与できる可能性があると考える.
|
Research Products
(1 results)