2011 Fiscal Year Annual Research Report
データ同化技術を用いた, マルチスケールな感染症伝播モデルの構築と評価
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11J08060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江島 啓介 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 感染症 / 数理モデル |
Research Abstract |
CFRの推定手法研究を行った.CFRとは,case fatality ratioの略で,感染者が死亡する確率のことを言う.アメリカではこの指標によって,段階的に対処をとるという政策が取られており,重要な指標といえる.しかし,感染から死亡までのタイムラグがあるために,流行初期の死亡者数を感染者数で割って導出したものでは,真のCFRと比較して,過小評価をすることになってしまうという問題がある.そこで,その問題の解決のため,インフルエンザの感染伝搬ダイナミクスを記述するモデルを用いて,CFR(case fatality ratio,感染者が死亡する確率)を求める手法を開発した.さらにCFRを妥当に評価できるための最短期間を求めた.その結果,季節性インフルエンザと同程度のCFRを想定した場合,3か月必要であるという結果を得た.より短期間のデータからCFRを推定するためには他の情報(入院患者数など)を用いる,ベイズ統計的手法を用いる(CFRの事前分布を仮定する)などが考えられる.この結果は別記の通り,国際誌に投稿し,受理された. 2007~2008にかけて,日本で,麻疹の流行が大きな問題となった.そこで,ワクチン接種の効果を流行動態と同時に推定するために,ワクチン効果を考慮した流行ダイナミクスを記述するモデルを構築した.データとして,ワクチン接種履歴を含んだ時系列の感染データを用いた.その結果,5-19歳の人口でのワクチン接種効果が低く推定された.これはワクチン効果の経年的な減少などによるものと思われる.これは,ワクチン接種をすべき年齢層を特定するのに役立つだけでなく,流行動態をリアルタイムで記述できるモデルとして有用である.本研究成果は現在投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数理モデルの妥当性評価のために,統計的手法を獲得し,成果を国際誌に投稿している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,体内ダイナミクスと感染ダイナミクスを結び付けるために,解析的研究を行う必要がある.
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Research Products
(2 results)