2011 Fiscal Year Annual Research Report
微生物-昆虫間クロストークの解析による昆虫の適応度上昇メカニズムの全容解明
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11J08066
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
石井 佳子 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | ファイトプラズマ / 共生細菌 / 昆虫の適応度 |
Research Abstract |
ファイトプラズマは昆虫媒介性の植物病原細菌であり、植物と昆虫という異なる界に属する生物に寄生するユニークな微生物である。ファイトプラズマは、植物に対して病気を引き起こす一方で、昆虫に対しては病気を誘導せず、むしろ産卵数の増加や寿命の延長などの『適応度の上昇』を引き起こす。また、ファイトプラズマの媒介昆虫であるヨコバイ(カメムシ目:ヨコバイ科)は、共生細菌が宿主に不足する栄養素を補っている可能性が高い。したがって昆虫体内においては、「共生細菌」と「ファイトプラズマ」とがフローラ(細菌叢)を形成し、これが昆虫宿主の生命活動をサポートしていると考えられ、複雑系の例として非常に興味深い。以上をふまえ本研究では、『ファイトプラズマ・昆虫・共生細菌』の3者間のクロストークを明らかにし、ファイトプラズマが昆虫宿主の適応度を上昇させる分子メカニズムの全容の解明を目指す。 昨年度は、(1)媒介昆虫ヨコバイ内における共生細菌の特定(→Sulcia muelleriとbeta-proteobacteriaに属する細菌の2種類が存在する)、(2)ヨコバイ体内における共生細菌の局在解析(→ヨコバイの菌細胞には、主としてS.muelleriおよびbeta-proteobacteriaに属する細菌が感染しており、互いに菌細胞の外側と内側とに住み分けている)、(3)昆虫宿主への適応度が異なるファイトプラズマの取得(→宿主への適応度が異なるファイトプラズマの入手に成功)、(4)ヨコバイ以外のファイトプラズマ媒介昆虫(カメムシ科)の探索について、実験を行った。 上記のうち最も大きな成果は、昆虫宿主への適応度が異なるファイトプラズマ系統を、野外から採集できたことである。これらのファイトプラズマゲノムを比較することによって、ファイトプラズマの宿主適応度上昇に関わる遺伝子を特定できることは明らかであり、共生細菌-ファイトプラズマ-昆虫間のクロストークによる昆虫の適応度上昇メカニズムについて研究が飛躍することは間違いない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)ヨコバイ共生細菌の特定という、論文化可能なデータを出すことができたため。 (2)「昆虫宿主への適応度が異なるファイトプラズマ」という、本研究が大きく発展するようなファイトプラズマ系統を野外で取得するすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、(1)媒介昆虫ヨコバイ内における共生細菌の特定、(2)ヨコバイ体内における共生細菌の局在解析、(3)昆虫宿主への適応度が異なるファイトプラズマの取得、を主に遂行した。そこで今年度は、(1)ヨコバイ共生細菌の特定についての論文化、(2)ヨコバイ共生細菌のゲノム解析、(3)昆虫宿主への適応度が異なるファイトプラズマのゲノム比較、の3項目を行う予定である。
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[Journal Article] Dramatic transcriptional changes in an intracellular parasite enable host switching between plant and insect2011
Author(s)
Oshima, K., Ishii, Y., Kakizawa, S., Sugawara, K., Neriya, Y., Himeno, M., Minato, N., Miura, C., Shiraishi, T., Yamaji, Y.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 6
Pages: e23242
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Unique morphological changes in plant pathogenic phytoplasma-infected petunia flowers are related to transcriptional regulation of floral homeotic genes in an organ-specific manner2011
Author(s)
Himeno, M., Neriya, Y., Minato, N., Miura, C., Sugawara, K., Ishii, Y., Yamaji, Y., Kakizawa, S., Oshima, K., Namba, S.
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Journal Title
Plant Journal
Volume: 67
Pages: 971-979
DOI
Peer Reviewed
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