2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子効果を導入したナノワイヤー熱電変換素子の開発と評価
Project/Area Number |
11J08106
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
村田 正行 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ビスマスナノワイヤー / 量子効果 / 高効率熱電変換材料 / 集束イオンビーム / 4端子抵抗測定 / ホール係数測定 |
Research Abstract |
熱電変換材料にナノワイヤーや超格子等の低次元量子構造を導入することにより、エネルギー変換効率が大幅に向上する可能性が理論的に示されており、本研究ではビスマスナノワイヤーを用いた熱電変換材料の研究を行っている。現在、研磨と集束イオンビーム(FIB)によるナノ加工を用いてナノワイヤー側面へ局所電極を作製し、ホール測定による移動度の評価を試みている。当該年度では、石英ガラス中に配置された直径4μmのビスマスマイクロワイヤー上に作製した局所電極を利用して実際にホール係数の測定を行った。その結果、150K~300Kのホール係数測定に成功し、ビスマスマイクロワイヤーの移動度の実験的評価に成功した。測定から得られた移動度はバルクビスマス単結晶の値とほぼ一致しており、この結果は直径4μmを仮定したモデル計算の結果にも対応していることが分かった。また、これまでの測定で同じ程度の直径のビスマスナノワイヤーにおいても異なる抵抗率の温度依存性が得られている。特に、低温領域で正の温度係数を持つ温度依存性は、これまでに本研究グループが報告したキャリアの平均自由行程制限モデルでは再現できていない。そこで、それらの結果について結晶方向と対応させて解析を行った。 その結果、ビスマスナノワイヤーの結晶方向がBinary-Bisectrix平面内に配向している場合には低温での正の温度係数が現れないのに対して、Trigonal軸に傾くにつれて低温で正の温度係数が現れることを確認した。さらに、直径160nmビスマスナノワイヤーのゼーベック係数において、これまでの200nm以上のサンプルでは現れなかったゼーベック係数の変化が確認された。理論計算では100nm以下でゼーベック係数が上昇すると予想されているにもかかわらず、160nmでゼーベック係数が上昇するとし、う結果が得られた。 このようにビスマスナノワイヤーにおけるゼーベック係数の上昇を世界で初めて確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までにビスマスナノワイヤーにおける4端子抵抗測定と2端子抵抗測定の比較、マイクロワイヤーにおけるホール係数測定に成功した。また、直径160nmビスマスナノワイヤーを利用したゼーベック係数の向上にも成功し、これは世界で初めての結果となった。当初の予定では3年目にナノワイヤーにゼーベック係数の向上の確認を予想していたが、当初の予定よりも大きい直径でゼーベック係数の向上が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究で、直径4μmのマイクロワイヤーを利用したホール測定に成功した。今後はより直径の小さい直径数百nmのサンプルを利用したホール測定を行い、移動度の変化を実験的に観察する。さらに、ホール測定の技術を応用してネルンスト係数測定を行い散乱機構を評価する。 直径160nmビスマスナノワイヤーのゼーベック係数の上昇を世界で初めて観測した。しかしながら、理論的に予想されている100nm以下という直径に比べて大きいことから、原因の特定を行っていく。具体的にはシュブニコフ・ド・バース振動の測定やネルンスト係数の測定を行う。さらに、理論予想より大きな直径で量子効果が現れた理由について、理論モデルの再構築を行う等の検討を始める。
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