2011 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒を用いた炭素-水素結合直接変換反応の理論及び実験研究
Project/Area Number |
11J08207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅子 壮美 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多置換オレフィン合成 / 有機金属化学 / 炭素-水素結合活性化 / 炭素-炭素結合生成 / 鉄触媒 |
Research Abstract |
本研究は,研究代表者らが最近開発した鉄触媒による芳香族炭素-水素結合の切断を経る直接アリール化反応の機構に関する実験および理論研究,また得られた高活性の要因を一般化することによる,鉄触媒を用いた新規炭素-水素結合直接変換反応の開発を目的としている.本年度は,鉄触媒とグリニャール試薬を用いたオレフィン炭素-水素結合の直接アリール化反応の開発に成功した.鉄触媒前駆体,配位子,溶媒,グリニャール試薬の滴下方法などの反応条件を精査した結果,ピリジル基を配向基として持つ様々な環状および非環状オレフィンの直接アリール化反応が定量的に進行した.非環状オレフィンについては,溶媒を適切に選択する事により生成物のE/Z比を制御できることも見出した.また本反応は,α,β-不飽和イミンの直接フェニル化へ適用可能であり,生成物の加水分解により不飽和エノンのフェニル化体が得られた。これはα,β-不飽和カルボニル化合物を官能基化する新規な合成法である.本反応の機構に関して,配向基に対してシン選択的なオレフィン炭素-水素結合切断による五員環メタラサイクル中間体の生成が鍵段階であるという知見が得られている.本研究で開発した反応は,資源豊富で環境に優しい鉄触媒を用いたオレフィン炭素-水素結合直接アリール化の例として初めてであるだけでなく,扱いに便利なグリニャール試薬を求核剤として用いる点でも前例がないものである.位置選択性および立体選択性が高度に制御された多置換オレフィンを0度という極めて温和な条件下,5分という短時間のうちに与える点も特筆すべきである.今後,詳細な反応機構の解明により,鉄触媒による炭素-水素結合活性化を経るサスティナブル合成法のさらなる発展が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究により鉄触媒を用いた炭素-水素結合変換反応をオレフィン炭素-水素結合へ一般化する事に成功した,本反応は,ユビキタス金属である鉄触媒を用い多置換オレフィンを極めて温和な条件下短時間のうちに与えることから,ルテニウム,ロジウム,パラジウムといった希少金属および過酷な条件を要していた従来法を凌駕する.
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Strategy for Future Research Activity |
人類の持続的発展に資する鉄触媒を用いた炭素-水素結合直接変換反応を一般合成反応へ成熟させるべく,反応基質と反応試剤の適用範囲のさらなる拡大,またアルキル基,アルケニル基,アシル基,および酸素,窒素,ハロゲン等のヘテロ原子の導入によるアリール化以外の反応形式の実現を目標とし,実験及び理論による反応機構研究と併行して研究を推し進める.
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Research Products
(6 results)