2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒を用いた炭素-水素結合直接変換反応の理論及び実験研究
Project/Area Number |
11J08207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅子 壮美 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄触媒 / アリル化 / 炭素-水素結合活性化 / 炭素-炭素結合生成 / 有機金属化学 |
Research Abstract |
本研究は,研究代表者らが最近開発した鉄触媒による芳香族炭素-水素結合の切断を経る直接アリール化反応の機構に関する実験および理論研究,また得られた高活性の要因を一般化することによる,鉄触媒を用いた新規炭素-水素結合直接変換反応の開発を目的としている.本年度は,鉄触媒とアリルフェニルエーテルを用いた芳香族炭素-水素結合の直接アリル化反応の開発に成功した.鉄触媒前駆体,配位子,グリニャール試薬などの反応条件を精査した結果,1-フェニルピラゾール類およびN-(キノリン-8-イル)ベンズアミド類の直接アリル化反応を実現した.いずれの場合もアリル化剤としてアリルフェニルエーテルを用いると反応が円滑に進行した.特に,アリル化後にその配向基を様々な官能基へ変換可能なキノリルアミドを用いた場合に,触媒および反応剤の使用量を大幅に削減することに成功した.重水素標識されたアリルフェニルエーテルを用いた実験により,本反応はr選択的にアリル化が進行することを見出した.本反応の機構に関しては,鉄活性種による炭素-水素結合切断を経て生成したメタラサイクル中間体へのアリルフェニルエーテルの挿入,および引き続くβフェノキシ脱離が鍵であると考えている.本研究で開発した反応は,資源豊富で環境に優しい鉄触媒を用いる点で社会的に意義深いだけでなく,配向基近傍の炭素-水素結合切断により生成した鉄中間体を求電子剤により捕捉し,触媒反応へ展開するという鉄の未知の反応性を見出した点で基礎学術分野の観点からも興味深い.今後,詳細な反応機構の解明により,鉄触媒による炭素-水素結合活性化を経るサステイナブル合成法のさらなる発展が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉄触媒を用いた新規炭素-水素結合変換反応の一つとして,芳香族炭素-水素の直接アリル化反応を開発した.これまで鉄触媒による炭素-水素結合切断後に導入できる官能基は有機金属反応剤由来のアリール基に限られていたが,はじめてアリール基以外の官能基を導入することに成功した.また,アリル化剤としてアリルフェニルエーテルという求電子剤を用いることも,鉄触媒と求電子剤を用いた炭素-水素結合変換反応の礎を築いた点で重要である.実際に,鉄触媒による直接アルキル化反応やアミノ化反応が進行するという予備的知見も得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
鉄触媒を用いた炭素-水素結合直接変換反応を一般合成反応へ成熟させるべく,反応基質と反応試剤の適用範囲のさらなる拡大を目指す.基質としてアリル化に有効であったN-(キノリン-8-イル)ベンズアミドをまず用い,アルキル基,アルケニル基,アシル基,および酸素,窒素,ハロゲン等のヘテロ原子の導入による新規炭素-水素結合変換反応の実現を目標とし,実験及び理論による反応機構研究と併行して研究を推し進める.
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Research Products
(3 results)